高齢者のリハビリにおすすめの体幹トレーニングは?得られる効果や注意点も解説

手足を除く胴体の筋力を鍛えることができるのが、体幹トレーニングです。
体幹トレーニングは、高齢者のリハビリに向いているのでしょうか。
本記事では、高齢者のリハビリに体幹トレーニングを取り入れることで得られる効果について解説していきます。
高齢者のリハビリにおすすめの体幹トレーニングも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
高齢者のリハビリに体幹トレーニングを取り入れることで得られる効果
高齢者のリハビリとして、体幹トレーニングを取り入れている病院や施設は多いです。
まずは、高齢者がリハビリに体幹トレーニングを取り入れる効果について解説していきます。
日常の動作がスムーズになる
体幹の筋力が回復すると、姿勢が安定して歩行や立ち上がり、椅子からの起き上がりといった日常の基本動作がスムーズになります。
特に高齢者は加齢によって筋力が低下しやすく、体のバランスを保つことが難しくなるため、体幹を鍛えることは非常に重要です。
お尻や腰、背中といった体を支える筋肉を強化することで動作のふらつきが軽減され、転倒のリスクも下がります。
動きに安定感が出ることで自分の体への信頼感が生まれ、活動範囲が広がるというメリットも期待できます。
体幹を整えることで、毎日の生活がより安心で快適なものになるでしょう。
便秘や消化不良が改善される
体幹トレーニングにより腸腰筋を鍛えると、腸が物理的に刺激されることで腸のぜん動運動が促され、便秘の解消につながります。
特に運動不足や加齢により、腸の動きが弱くなっている高齢者にとっては、効果が期待できます。
さらに、内臓を支える筋肉も同時に強化されることで内臓の位置が正しく保たれ、消化器の働きが安定するようになり、便秘や消化の不調が改善されることで、QOL向上にもなるでしょう。
ケガの予防や腰痛の軽減
体幹を鍛えることで体のバランス感覚が向上し、転倒や転落といった事故のリスクを減らすことができます。
特に高齢者にとっては、転倒による骨折が寝たきりや要介護状態のきっかけになる危険性もあるため、ケガの予防は非常に重要です。
また、体幹トレーニングによって腹筋や背筋が強化されると、正しい姿勢を保ちやすくなります。
姿勢の乱れが改善されることで、腰への過度な負担が軽減され、慢性的な腰痛の緩和にも効果が期待できます。
基礎代謝が向上する
体幹トレーニングを継続して筋肉量が増えると、基礎代謝も自然と高まります。
基礎代謝が上がるとエネルギーの消費量が増え、内臓脂肪やおなかまわりの脂肪が減少しやすくなることで体が引き締まり、若々しい印象を保てるようになるのも大きなメリットです。
また、代謝が上がることで体温が安定し、冷え性の予防にもつながります。
尿漏れや頻尿を予防する
骨盤底筋を鍛える体幹トレーニングは、高齢者に多い尿漏れや頻尿の予防に効果的です。
特に加齢による筋力低下や、女性の場合は出産により、骨盤底筋が弱まりやすくなります。
この筋肉は膀胱や尿道を支える役割を担っており、鍛えることで括約筋が強化され、排尿を適切にコントロールできるようになります。
その結果、急な尿意を感じにくくなったり、咳やくしゃみなどによる尿漏れが軽減されたりするでしょう。
排尿トラブルの改善や予防のために、日常生活に取り入れてみましょう。
認知症を予防する
体幹トレーニングなどの運動を日常に取り入れることで脳の血流が促進され、脳の活性化が期待でき、認知症のリスクを抑える効果があるとされています。
ジョギングやウォーキング、ヨガといった有酸素運動を組み合わせると、より高い予防効果が期待できます。
トレーニングは日々の習慣として無理なく継続することが、認知症予防のカギです。
高齢者のリハビリにおすすめの体幹トレーニング【座位】
車椅子に乗っている方でも、体幹トレーニングは可能です。
椅子に座った状態でも可能な、リハビリにおすすめの体幹トレーニングを紹介していきます。
体ねじり運動
体ねじり運動は、おなかや背中まわりのインナーマッスルを鍛えることができます。
体ねじり運動の方法は、次のとおりです。
- 椅子に腰かけて背筋をまっすぐ伸ばす
- 頭の後方で手を組む
- 右ひじを左ひざに向けてゆっくり斜めに倒す
- 左ひじを右ひざに向けてゆっくり斜めに倒す
筋肉を痛める可能性があるので、ひじとひざを無理につける必要はありません。
また、上体を倒すときに息を吐き出すのがポイントです。
骨盤の前後運動
骨盤の前後運動は、おなかと背中まわりの筋肉や、骨盤と下肢をつなぐ筋肉を鍛えることができます。
骨盤前後運動の方法は、次のとおりです。
- 胸を張りつつおなかを前に出す
- 姿勢を5秒キープする
- おなかをへこませる
姿勢をキープするのが難しい場合は慣れるまで両腕をテーブルに置きましょう。
おなかの内圧を高める運動
おなかの内圧を高める運動は、おなかと背中の筋肉をバランスよく鍛えることができます。
おなかの内圧を高める運動の方法は、次のとおりです。
- 息を3秒間かけて吸う
- 7秒間かけて吐き出す
おなかに小さめのバランスボールを抱えながらやると行いやすくなります。
息を吐く際に、口をすぼめておなかをへこませるようにするとよいでしょう。
バランスを保つ運動
バランスを保つ運動は、お尻の筋肉を鍛えることができます。
バランスを保つ運動の方法は、次のとおりです。
- 背もたれから背中を離した状態で姿勢を正す
- お尻を交互に浮かせる
お尻で足踏みをするように繰り返しますが、お尻が上がりにくい場合はひじ置きに手をつきながら挑戦してみましょう。
かかと上げ運動
かかと上げ運動は、ふくらはぎの筋力を鍛えることができます。
かかと上げ運動の方法は、次のとおりです。
- 椅子に座って姿勢を正す
- 足をしっかりと床につける
- 両手を太ももに置く
- かかとをゆっくりと床から浮き上がらせる
- ゆっくりと元の位置に戻す
ふくらはぎの筋肉を痛めないように、ゆっくりと動かすことがポイントです。
つま先上げ運動
つま先上げ運動は、すねの筋肉を鍛えることができます。
つま先上げ運動の方法は、次のとおりです。
- 椅子に座って背筋を伸ばす
- 足を床につける
- かかとをつけたまま、つま先を持ち上げる
- つま先をゆっくりと元の位置に戻す
かかと上げと同様に急に持ち上げるのではなく、ゆっくり持ち上げるようにしてください。
高齢者のリハビリにおすすめの体幹トレーニング【仰向け】
座ったり立ったりするのが難しい寝たきりの方でも、体幹トレーニングを行うことは可能です。
続いては、高齢者が寝転がった状態でできる、リハビリにおすすめの体幹トレーニングを紹介していきます。
ドローイン(腹式呼吸)
ドローインは、骨盤底筋群を鍛えるので尿漏れの予防効果が期待できます。
ドローインの方法は、次のとおりです。
- 寝転がった状態で息を大きく吸い込む
- 息をゆっくりと吐き出す
息を吐き出すときはタオルなどを使用しておなかを押し込むと、効果がアップします。
お尻の穴を締めながら行うと、より骨盤底筋に刺激を与えることができるでしょう。
ヒップリフト(お尻上げ)
ヒップリフトでは、おなかとお尻、下肢の筋肉を鍛えることができます。
ヒップリフトの方法は、次のとおりです。
- 仰向けに寝た状態で両ひざを立てる
- 息を吐きながらお尻を持ち上げる
- 5秒かけてお尻を元の位置に戻す
お尻を持ち上げるときは、腰だけが反らないように注意してください。
クランチ(上体起こし)
クランチは、おなかの筋肉を鍛えることができます。
クランチの方法は、次のとおりです。
- 仰向けに寝て両ひざを立てる
- へそを見るようにして頭をゆっくりと起こす
- 3秒かけて元の位置に戻る
クランチを行うときは、息を止めないように注意してください。
首に痛みを感じる場合は、手を頭の後ろで組んで支えながら取り組んでみましょう。
もも上げ
もも上げは、おなかや下肢を鍛えることができます。
もも上げの方法は、次のとおりです。
- 仰向けの状態で両ひざを立てる。
- 3秒かけて片足を持ち上げる
- 3秒かけて元の場所に戻す
- 左右の足で交互に行う
もも上げをするときは、腰やお尻を浮かせないようにしましょう。
足を上げるときは息を吐き、下ろすときに息を吸うようにすると息が切れにくくなります。
クロスクランチ
クロスクランチは、腸腰筋や腹筋群などのおなかまわりを鍛えることができます。
クロスクランチのやり方は、次のとおりです。
- 仰向けの状態で両ひざを立てる
- おなかの上で手を組みながら頭を上げる
- 片足をクロスする形で持ち上げる
- 両方の足でリズミカルに繰り返す
高齢者には難易度の高い動きのため、無理のない範囲で取り組みましょう。
ひざを胸につけるイメージで行うのがポイントです。
高齢者が体幹トレーニングを実施するときの注意点
正しい知識のない状態で、体幹トレーニングを始めるのは危険です。
ここでは、高齢者が体幹トレーニングを実施するときの注意点について解説していきます。
疾患や疾病がある場合はリスクがある
持病や既往症のある方が体幹トレーニングを行う場合には、注意が必要です。
特にひざや腰に痛みがある方は、無理に動かすことで症状が悪化する可能性があるため、トレーニングを始める前には医師に相談し、自分の体調に適した運動かどうか確認しましょう。
また、動作中に胸の痛みや苦しさを感じた場合は、すぐに運動を中止してください。
高血圧の方も、激しい運動によって血圧が急上昇するリスクがあるため、運動の強度を調整する必要があります。
体の状態を把握しながら、無理のない範囲でトレーニングを取り入れましょう。
トレーニング前後のストレッチを忘れない
体幹トレーニングの効果を高めつつケガを防ぐためには、トレーニング前後のストレッチが重要です。
準備運動として行う「動的ストレッチ」は、関節の可動域を広げ、筋肉を温めて運動パフォーマンスを高める効果があります。
一方で、トレーニング後に行う「静的ストレッチ」は、使った筋肉をゆっくり伸ばして疲労を和らげることが目的です。
日々の運動にストレッチを取り入れることで、体幹トレーニングの効率と安全性が向上します。
初心者は器具を活用する
運動習慣がない初心者や高齢者が体幹トレーニングを始める際は、無理のない範囲で安全に取り組めるよう、ゴム製のトレーニング器具を活用するのがおすすめです。
ゴム製の器具を使用するのは、下記のメリットがあります。
- 負荷を調整できる
- 鍛えたい部位を意識しやすい
- 軽量で持ち運びが簡単
- 安全に使用できる
- 手軽に購入できる
自宅でも無理なく継続できるため、体を動かすことに不安がある方や高齢者にとって、導入しやすいトレーニング方法といえるでしょう。
こまめに水分を補給する
体幹トレーニングを行う際には、こまめな水分補給を忘れずに行うことが大切です。
運動中は汗をかきやすく、体内の水分が不足しやすくなるため、血液が濃くなって循環が悪化するおそれがあります。
その結果、体調を崩したり、熱中症のリスクが高まったりするため注意しましょう。
水分補給の目安としては15分に1回程度、休憩をとりながら少量ずつ飲むようにするのがポイントです。
一度に大量の水をとっても体が吸収しきれないため、こまめに摂取するとよいでしょう。
常温またはやや冷たい水がおすすめで、スポーツドリンクなどで塩分やミネラルも補えるとより安心です。
安全にトレーニングを続けるためにも、水分補給のタイミングを意識しましょう。
呼吸を忘れない
運動中に呼吸を止めてしまうと体内の酸素が不足し、血圧の急上昇や体調不良を引き起こすおそれがあります。
特に高齢者や持病を持っている方は、気を付けましょう。
せっかくの体幹トレーニングも、呼吸が不十分であれば効果が薄れてしまうため、運動に合わせて無理のないペースでゆっくりと息を吸い、吐くことを意識しましょう。
呼吸はリズムよく自然に行うのがポイントで、腹式呼吸を取り入れることでより深く体幹に働きかけることができます。
また、おなかに手を当てて膨らみを感じながら行うと、正しい呼吸が身に付きやすくなります。
高齢者の体幹トレーニングに関するよくある質問
体幹トレーニングは高齢者にとって安全かつ効果的な運動ですが、初めて取り組む方は疑問や不安があるかもしれません。
ここでは、高齢者の体幹トレーニングに関してよくある質問をまとめ、回答していきます。
日々のトレーニングに役立てるためにも、ぜひ参考にしてください。
体幹トレーニングの効果が出るまでの時間は?
体幹トレーニングの効果を実感するまでには、一般的に2~3カ月ほどかかるとされています。
特に、高齢者の場合は筋力の回復に時間がかかるため、すぐに結果を求めずに継続することが大切です。
効果が現れるまでの期間には個人差があり、年齢や体力、生活習慣、トレーニングの頻度・内容によっても異なるため、焦らずに自分のペースで取り組みましょう。
体幹トレーニングのデメリットは?
体幹トレーニングは健康維持や体力向上に効果的な運動ですが、誤った方法で行うと体に負担がかかり、筋肉や関節を痛めるリスクがあります。
特に高齢者や運動に慣れていない方が、無理な姿勢や過度な強度でトレーニングを続けると、腰痛や関節痛を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
また、体調が優れないときや疲労が蓄積しているときに無理をすると、かえって体力を消耗し、免疫力の低下やケガの原因にもなります。
トレーニングを始める際は、自分の体調や運動歴に応じて内容を調整し、継続しやすいメニューを選ぶことが大切です。
不安がある場合は、専門家の指導を受けながら進めましょう。
体幹トレーニングができる場所は?
体幹トレーニングは、自宅のほかにもスポーツジムや地域の体育館などで取り組むことができます。
最近では、高齢者向けの健康教室や体操プログラムを開催している自治体も増えており、仲間と一緒に取り組める点も魅力です。
リハビリ目的で体幹を鍛えたい場合は、理学療法士や作業療法士が在籍する施設で、専門的なサポートを受けながら行うのがおすすめです。
まとめ
今回は、高齢者のリハビリに有効な体幹トレーニングについて解説しました。
体幹トレーニングは、加齢によって下半身の筋力が低下しやすい高齢者にとって、転倒予防や生活機能の維持に効果的です。
安全に行うためには座ったままや寝たままの状態など、無理のない姿勢で取り組むことが基本であり、体力に応じて徐々に強度を上げていくとよいでしょう。
ただし、ひざや腰に痛みがある方や持病をお持ちの方は、運動を始める前に必ず医師へ相談してください。
リスクを把握して正しい方法で継続することで、健康的な日常生活のサポートにつながります。
自身の体調に合わせて、無理のないペースで取り組みましょう。