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要介護1とは?利用できるサービスや要支援との違いを徹底解説!

要介護1とは?利用できるサービスや要支援との違いを徹底解説!

自身や家族が要介護1に認定された方は、

「要介護1とはどのような状態なの?」

「要介護1ではどのようなサービスを利用できるの?」

このような疑問があるのではないでしょうか。

要介護1とは、基本的な日常生活は送れるものの、部分的に介護が必要な状態です。

この記事では、要介護1の概要や受けられるサービス、かかる費用などを解説します。

要介護1について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

要介護1とは?

要介護1は具体的にはどのような状態なのでしょうか。まずは概要や原因、認定される基準について解説していきます。

要介護1について

 

要介護1とは、日常生活における動作の一部に介助が必要な状態です。

例えば、入浴時や排泄時などにサポートが必要になることがあります。

要介護の度合いは1~5までの5段階に分かれており、その中でも要介護1は介護を必要とする場面が一番少ない状態です。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 食事や排泄の際に、手助けが必要な場合がある
  • 立ち上がるときや歩くときなどに支えが必要
  • 軽い認知症が疑われる

要介護1になる原因

 

2022(令和4)年国民生活基礎調査によると、要支援・要介護の原因で一番多いのが認知症の16.6%です。そこから順に「脳血管疾患(脳卒中)」16.1%、「骨折・転倒」13.9%、「高齢による衰弱」13.2%、「関節疾患」10.2%となっています。

要介護だけで見ても認知症が一番多く、その割合は23.6%です。

参照:2022(令和4)年国民生活基礎調査

要介護1の認定基準

 

要介護に認定される基準として、「要介護認定等基準時間」という指標があります。

要介護認定等基準時間とは、「要介護者を介護するためにどれほどの時間を要するか」を目安として、厚生労働省が定めているものです。

介護に必要な時間は要支援の2段階、要介護の5段階を合わせて、7つに区分されています。

 

判定区分要介護認定等基準時間
要支援125分以上 32分未満
要支援232分以上 50分未満
要介護132分以上 50分未満
要介護250分以上 70分未満
要介護370分以上 90分未満
要介護490分以上110分未満
要介護5110分以上

 

この表から読み取れるのは、介護度が上がるほど介護に必要な時間が増えるということです。

参照:要介護認定はどのように行われるか

要介護認定等基準時間を算出する4つのプロセス

 

では、この「要介護認定等基準時間」はどのようにして算出されるのでしょうか。

認定作業は公平さを保つため、以下に挙げた4つの客観的プロセスを経て行われます。

 

訪問調査

市区町村の認定調査員などが自宅や入所中の施設を訪問し、心身の状態について本人や家族から聞き取り調査を行うものです。

調査は全国共通の基本調査74項目に沿って行われ、身体機能や生活機能、認知機能、特別な医療の必要性などが確認されます。

調査票だけでは伝わらない日常生活の様子や介護の手間なども「特記事項」として具体的に伝える必要があります。

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「認定調査票(概況調査)

 

主治医意見書の作成

市区町村からの依頼に基づき、かかりつけ医(主治医)が医学的な観点から心身の状態に関する「主治医意見書」を作成します。

病気やケガの状況、認知症の症状、サービス利用にあたっての医学的な注意点などが記載されます。

かかりつけ医がいない場合でも、役場の窓口や地域包括支援センターに相談することで診断を受けることが可能です。

 

コンピューターによる一次判定

訪問調査の結果(基本調査74項目)と、主治医意見書の情報をコンピューターに入力し、客観的なデータに基づいて「要介護認定等基準時間」を算出します。

あくまで一次判定であり、要介護認定を決定するものではありません。

この結果は統計的なデータによるもので、実際の介護時間に即していないケースもあります。

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか

 

介護認定審査会による二次判定

二次判定では、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が最終的な審査を行います。

コンピューターの判定だけでは捉えきれない個々の状況を専門家が総合的に判断し、最終的な要介護度を導き出します。

一次判定の結果と、訪問調査の「特記事項」、そして「主治医意見書」のすべてをもとに、適正な介護の手間を判断するのが「二次判定」です。

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか

 

介護認定の有効期間と変更手続き

 

要介護認定には有効期間が定められています。

  • 新規の申請:原則6カ月
  • 更新申請:原則12カ月

更新申請の場合、状態に応じて最大48カ月の有効期間が設定される場合もあります。

介護認定は自動で更新されないため、有効期間が終了する前に更新手続きが必要です。

通常、有効期間満了の60日前から、市区町村での更新手続きが可能になります。

また、有効期間の途中でも、病状の悪化などにより心身の状態が大きく変化した場合は、「区分変更申請」を行うことで要介護度の見直し申請が可能です。

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「サービス利用までの流れ | 介護保険の解説

要支援と要介護の違いとは?

要支援と要介護は、どのように違うのでしょうか。

それぞれの特徴を踏まえて、どのような部分が異なるのか解説します。

要支援とは

 

要支援は、日常生活の基本的な動作はほぼ自分で行えるものの、一部介助を必要とし、要介護状態への移行を防ぐためになんらかの支援が必要な状態とされます。

一方で、要介護は、要支援状態から悪化し、日常生活の基本的な動作に一部または全体的な介助を必要とする状態をいいます。

要支援は1~2の2段階、要介護は1~5の5段階に分けられています。

 

要支援で使えるサービス

要介護認定ではなく要支援認定を受けた場合、「介護予防サービス」が利用できます。

身体機能の低下を防ぎ、自立した生活を続けられるように支援することを目的とするもので、具体的には以下のようなサービスがあります。

  • 介護予防訪問入浴介護
  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
  • 介護予防福祉用具貸与など

 

ほかにも、地域密着型サービスの「介護予防小規模多機能型居宅介護」と「介護予防認知症対応型通所介護」は要支援1・2の両方で利用可能です。

「介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」については、要支援2のみ利用可能で、要支援1では利用できません。

 

要支援で使えないサービス

要支援の方は、原則として以下のサービスは利用できません。

  • 介護老人保健施設:要介護3以上のみ
  • 特別養護老人ホーム:要介護1以上のみ
  • 介護医療院:要介護1以上のみ

 

ほかにも、要介護のみを対象とした地域密着型サービスが利用できません。

これらは、より介護の必要性が高い要介護認定者向けのサービスと位置づけられています。

なお、一部の認知症対応型サービスや、介護保険から総合事業へ移行した訪問介護・通所介護は、要支援の方でも条件によって利用できる場合があります。

 

要支援の支給限度額

介護保険サービスを利用できる上限額(支給限度額)は、要支援1と要支援2で異なります。

 

要介護度1カ月あたりの支給限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説

要介護1と要支援2の違いとは

 

要介護1と要支援2のどちらかを判断する際に、「認知機能はどの程度か」「どのくらい状態が安定しているか」を見ることがあります。

認知機能については、要支援2では認知機能の低下はなく、日常生活における動作は自分で行えるとされます。

状態の安定性については、今後半年の期間内に、心身が悪化する可能性があるかを判断します。

最終的には、介護認定審査会でどの要介護度に認定するのかが決められるため、「認知機能はどの程度か」と「どのくらい状態が安定しているか」の判断基準については、参考までに考えるのがよいでしょう。

要介護1と要支援2の、それぞれの要介護認定の目安については以下のとおりです。

 

要介護度要介護認定の目安
要介護1●日常生活における基本的な動作は自分一人でできるが、介助が必要な場合もある

●要支援2に比べ、心身状態や認知機能が低下している

要支援2●日常生活における基本的な動作は行える

●サポートを受ければ、要介護認定を防げる

 

要介護1と要介護2の違いとは

 

要介護2は要介護1に比べ、介護が必要になる場面が多くなります。

例えば、食事を一人で行う分には問題ないものの、排泄や入浴時に部分的な介助が必要になる方が要介護1と認定されたとしましょう。

そこで、食事の際にもサポートが必要となれば、要介護2とされます。

要介護2では思考力や判断力が要介護1より低下しているため、さらに多くの介護が欠かせなくなります。要介護認定基準時間は50分以上70分未満で、要介護1に比べてより多くの介護時間が必要になります。

要介護1と要介護2の要介護認定の目安については以下のとおりです。

 

要介護度要介護認定の目安
要介護1●日常生活における基本的な動作は行えるが、介助が必要

●要支援2に比べ、心身状態や認知機能が低下している

要介護2●食事や入浴、排泄において、全般的なサポートが必要

●要介護1に比べ、思考力や判断力が低下している

要介護1で利用できるサービスの種類について

要介護1に認定された場合、どのようなサポートを受けられるのかが気になるところです。

受けられるサービスは大きく分けて、「訪問型サービス」「通所型サービス」「宿泊サービス」「生活環境を整えるためのサービス」「入居して利用できるサービス」「地域密着型サービス」の6つです。

自分自身と、ご家族がどのようなサービスを受けたいのかを考えながら、内容を見ていきましょう。

1.訪問型サービス

 

訪問型サービスには、「訪問介護」「訪問看護」「訪問入浴」「訪問リハビリ」「夜間対応型訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の6つがあります。

主に、ホームヘルパーや看護師、介護職員などが自宅を訪れ、介護を行ってくれるサービスです。

 

訪問介護

ホームヘルパー(訪問介護員)が自宅を訪れ、食事や入浴、排泄などの身体介護を行い、掃除や洗濯、料理、買い物などの生活支援を受けられるサービスです。

介護に加え、家事の手助けも行ってくれるのが特徴です。

 

訪問看護

看護師や保健師が主治医の指示をもとに、療養面の世話に加え、体温や血圧、動脈の測定なども行います。自宅にいながら、医療的なサポートを受けられるのは安心です。

 

訪問入浴

看護職員や介護職員が、入浴車で入浴介護をしてくれるサービスです。一人で入浴すると転倒の危険性がありますが、職員がそばについていれば安心して入浴できます。また、背中などの自分では手の届きにくい箇所も、しっかりと洗い流してくれるので清潔さを保てます。

 

訪問リハビリ

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など、リハビリの専門員が自宅を訪れ、心身機能の維持や回復を目的とした訓練を受けられます。

 

夜間対応型訪問介護

ホームヘルパーが夜の10時から翌朝6時の時間帯に自宅を訪問し、介護を行います。排泄の介助や安否確認などを行ってくれます。

夜中に立ち上がるときや歩くときは、視界が暗く転倒するおそれもありますが、この時間帯にホームヘルパーが在住してくれているのは、非常に安心です。

転んで起き上がれなくなっていたりした場合は、救急車を呼んでもらえます。

 

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

ホームヘルパーや看護師が連携し、定期的に自宅を巡回・訪問してくれます。

24時間365日、必要なタイミングで介護を受けられるので、利用者としても安心です。

ホームヘルパーと看護師が連携してサポートを行っているため、看護と介護が一体化しているのもポイントです。

2.通所型サービス

 

通所型サービスには、「通所介護」「通所リハビリテーション」「療養通所介護」「地域密着型通所介護」「認知症対応型通所介護」の5つがあります。

介護者が施設に通い、介護やリハビリなどを受けられます。

 

通所介護

日帰りで施設に通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどを受けられるデイサービスです。送迎バスで移動できるため気軽に通いやすく、ご家族にとっても介護負担の軽減になりやすいサービスです。

利用者同士で会話をすることで気分転換にもなり、精神的な負担も和らげてくれるでしょう。

 

通所リハビリテーション

介護老人保健施設や医療機関に日帰りで通い、理学療法や作業療法などのリハビリを受けるサービスです。身体機能や生活機能の向上が期待できます。

 

療養通所介護

認知症や難病、がんの末期患者、重度要介護の方など、看護職員による観察を必要とする方が対象です。日帰りで食事や入浴、機能訓練などが受けられます。

 

地域密着型通所介護

利用人数が18名以下と定められているデイサービスです。利用者が少ない分、利用者や職員との距離が近く、親しみやすいのが魅力的です。

 

認知症対応型通所介護

サービス内容はデイサービスと変わらず、食事や入浴、機能訓練などを受けられますが、認知症の方限定となります。認知症の専門的なサービスを受けられるため、認知症の方でデイサービスを受けたい場合におすすめです。

3.宿泊して利用できるサービス

 

施設に短期間宿泊して、日常生活における介護や機能訓練を受けられます。

施設などに宿泊して受けられるサービスは、「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の2種類です。

 

短期入所生活介護

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに短期間入所し、食事や入浴などの支援や機能訓練を受けられるサービスです。基本的には数日から1週間ほどの入所ですが、最長で30日間利用できます。ご家族の諸事情で、一定期間の介護が難しい場合などに利用することで、介護負担の軽減につながるでしょう。

 

短期入所療養介護

介護老人保健施設や介護医療院、医療機関に短期間入所し、医療や看護、日常生活におけるサポートを受けられます。療養生活の質を上げることが目的で、最長30日間利用できます。

4.生活環境を整えるサービス

 

介護をする上で福祉用具が必要になると、費用の負担が大きくなります。そのような場合に、「福祉用具を借りる際の費用を負担してくれる」「購入費を支給してくれる」といった、経済面で助かるサービスを受けられます。

 

福祉用具貸与時のサービス

要介護1では、以下の福祉用具が借りられます。

  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助杖

※手すりやスロープは、設置工事が必要ないものに限ります

 

これらを借りる際の費用は、基本的には1割負担です。ただし所得が一定以上であれば、2割から3割負担となる場合があります。

また、医師が必要だと判断した福祉用具を市区町村が認めた場合は例外給付となり、レンタルができるようになります。

例外給付の対象になる福祉用具は以下のとおりです。

  • 車椅子
  • 介護用ベッド
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 歩行を感知する機器
  • 移動用リフト
  • 自動排泄処理装置

 

特別福祉用具購入時のサービス

衛生面の観点からレンタルができない福祉用具(入浴や排泄で利用するもの)の購入費が支給されます。

対象の福祉用具の例

  • 腰掛便座
  • 簡易浴槽
  • 入浴補助用具

 

一度利用者側で全額支払ってから、10万円を上限として最大9割の金額が介護保険から払い戻される仕組みです。

市区町村の指定を受けた福祉用具事業者から購入しなければ、給付の対象外となってしまうため、この制度を利用する際はケアマネージャーや市区町村にしっかりと確認しておきましょう。

 

住宅改修時のサービス

介護の際に必要と認められた住宅の改修に対して、18万円を上限とした改修費の9割が支給されるサービスです。改修場所は、玄関や廊下、浴室、階段などがあります。

原則として支給は1回のみで、支給を受け取るには、改修前に市区町村への申請が必要です。

5.入居して利用できるサービス

 

有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設に入居することで受けられるサービスについて見ていきましょう。

 

特定施設入居者生活介護

特定施設入居者生活介護を受けられる施設は、「有料老人ホーム」「軽費老人ホーム」「養護老人ホーム」などです。食事や入浴、排泄の介護のほか、機能訓練も受けられます。

6.地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、高齢者が要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で生活を続けられるように支援するためのサービスです。

代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

 

認知症対応型共同生活介護

認知症の方が対象で、5~9人の利用者とスタッフが同じ住居で共同生活を行います。少人数での生活のため一人ひとりの距離感が近く、親しみやすい雰囲気です。

食事や入浴、排泄などの日常生活の支援に加え、認知症の専門的なケアを受けられるのが特徴です。

 

地域密着型特定施設入居者生活介護

指定を受けた29人以下の入居者が、有料老人ホームや軽費老人ホームで、食事や入浴などの支援や、機能訓練などを受けます。

 

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

常に介護を必要としている方が対象で、食事や入浴などの支援、機能訓練、療養上のサポートを受けられます。

特徴は、家庭的な明るい雰囲気で、家族や地域とのつながりを大切にしている点です。周りの方々とのつながりを大切にしながら、サポートを受けたい方におすすめです。

居住費や施設のサービス費、食費、生活費などは別途必要です。

 

小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、「通い(デイサービス)」を中心に、利用者の希望や状況に応じて「訪問介護」や「ショートステイ」を柔軟に組み合わせて利用できるサービスです。

すべてのサービスを同じ事業所のなじみのスタッフから受けられるため、安心感を覚えやすい特徴があります。

要介護1における利用料金は、以下のとおりです。

  • 月額・同一建物居住者以外の場合:10,458単位で1割負担の目安は10,458円
  • 同一建物居住者の場合:9,423単位で1割負担の目安は9,423円

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護

 

看護小規模多機能型居宅介護

看護小規模多機能型居宅介護とは、「小規模多機能型居宅介護」に「訪問看護」の機能が加わったサービスです。

医療ニーズの高い方や退院直後で不安定な方でも、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、介護と看護が一体となったサポートを提供します。

要介護1における利用料金は、以下のとおりです。

  • 月額・同一建物居住者以外の場合:12,447単位で1割負担の目安は12,447円
  • 同一建物居住者の場合:11,214単位で1割負担の目安は11,214円

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

要介護認定を受けて介護サービスを利用するための手順

要介護認定を受けた後、実際にサービスを利用するためには、いくつかの手順を踏んで手続きを進めていく必要があります。

自宅でサービスを利用する場合

 

要介護認定を受けて介護サービスを利用する場合、サービスの計画書である「ケアプラン」を作成する必要があります。

ケアプランの作成を担ってくれるのは「ケアマネジャー(介護支援専門員)」と呼ばれる介護の専門家です。

まずは、ケアマネジャーを紹介してくれる「居宅介護支援事業者」を探すことになります。

 

居宅介護支援事業者の探し方・選び方

居宅介護支援事業者は、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターでリストをもらえます。

自分で探しても問題ありませんし、希望を伝えて紹介してもらうことも可能です。

厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも検索ができます。

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム

 

ケアマネジャーを選ぶときのポイント

ケアマネジャーは介護生活のパートナーとなる重要な存在です。

以下のような点を参考に、信頼できる人を選びましょう。

  • 相性:話しやすく、親身に相談に乗ってくれるか
  • 専門性:医療やリハビリなど、特定の分野に詳しいか
  • 対応の速さ:連絡がつきやすく、フットワークが軽いか
  • 提案力:複数の選択肢を提示し、メリット・デメリットを丁寧に説明してくれるか

もし担当のケアマネジャーと合わないと感じた場合は、事業所に相談して変更することも可能です。

 

ケアプラン作成の基本的な流れ

ケアプラン作成の基本的な流れとして最初に行われるのは、ケアマネジャーの自宅訪問です。

利用者や家族の心身の状態や生活環境、そして「どのような生活を送りたいか」という希望を詳しく聞き取る「アセスメント(課題分析)」から始まります。

その内容をもとにしてケアプランの原案が作られた後、利用者、家族、各サービス担当者が集まる「サービス担当者会議」で検討・調整を行います。

最終的に全員が合意すれば、正式なケアプランの完成です。

施設に入所する場合

 

施設に入所する場合、ケアプランの作成前に介護施設を選択することから始まります。

資料の閲覧や施設の見学を経て、正式な申込を完了させた後に、ケアプランの作成に着手する流れが一般的です。

ケアマネジャーへの依頼方法は、施設の種類によって異なります。

 

ケアマネジャーが外部委託できない施設

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームでは、施設に所属するケアマネジャー(施設ケアマネ)がケアプランを作成します。

この場合、利用者が外部のケアマネジャーを選んで依頼することはできません。

 

ケアマネジャーが外部委託可能な施設

介護施設の中でも、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、ケアマネジャーの外部委託が可能です。

入所者自身が外部の居宅介護支援事業者と契約し、担当ケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。

ケアプラン作成の基本的な流れは、自宅でサービスを利用する場合と同様です。

要介護1で受け取れる支給限度額とは

要介護1における1カ月の支給限度額は、167,650円です。

支給限度額は要介護度によって決められており、それぞれの要介護度で受けられる1カ月あたりの支給限度額は以下のとおりです。

要介護度1カ月あたりの支給限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

 

1カ月の費用が限度額以内の場合は自己負担が1~3割になり、この範囲を「区分支給限度額」と言います。

要介護1の場合、サービスの利用額が167,650円を超えると全額自己負担になります。

要介護1ではどれくらいの費用がかかるのか

要介護1で在宅介護や施設を利用する場合、どれほどの費用が必要なのかが気になるところです。

ここでは、自宅で介護をする場合と施設を利用する場合に分けて、かかる費用の目安について説明します。

自宅で介護をする場合

 

自宅で介護をしてもらう場合にかかる費用の一例を、以下の表にまとめました。

 

介護サービス内容費用
訪問介護(月4回)13,680円
訪問看護(月4回)20,840円
通所介護(8回)57,840円
短期入所生活介護(3日間)23,850円
介護サービス費用の合計額116,210円
自己負担額11,621円

 

参照:厚生労働省の介護サービス概算料金の試算

これらの費用はあくまでも目安です。在宅介護では家賃や光熱費、生活費なども必要になるため、思っているよりも費用がかかるかもしれません。

しかし、自己負担額を1割に抑えられるのは、経済的にも非常に助かるのではないでしょうか。

施設を利用する場合

 

自宅で介護をする場合より、施設を利用する際は費用が高くなりやすい傾向です。

しかし、ご家族だけのサポートでは不安に感じている方は、施設を利用するのが最適でしょう。

施設を利用する際にかかる費用の一例は以下のとおりです。

 

利用する施設月額利用料
介護付き有料老人ホーム15~30万円
住宅型有料老人ホーム15~30万円
認知症対応型共同生活介護15~30万円
サービス付き高齢者向け住宅一般型:5~25万円

介護型:15~40万円

介護老人保健施設6~17万円
介護医療院9~17万円
介護型ケアハウス8~20万円

 

「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「認知症対応型共同生活介護」は比較的、月額利用料が高い傾向です。

利用施設によってかかる費用は異なるため、経済状況も踏まえながら検討するようにしましょう。

要介護認定を受けた方が知っておきたい負担軽減制度

介護保険サービスの自己負担額や医療費が高額になった場合、その負担を軽減するための制度があります。

複数の制度が存在しますが、それぞれの仕組みについて知っておくことで、経済的な不安を和らげることが可能です。

高額介護サービス費

 

高額介護サービス費制度とは、1カ月に支払った介護保険サービスの自己負担額の合計が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、超えた分の金額が払い戻される制度です。

自己負担額は所得に応じて1割~3割と定められていますが、習慣的にサービスを利用することで介護費が膨れ上がってしまうケースも想定できます。

高額介護サービス費の制度を利用することにより、上記のような事態に陥っても負担をある程度解消することが可能です。

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます

 

負担上限額と払い戻し例

負担上限額は、世帯の所得状況によって区分されています。

 

所得区分(対象者)負担の上限額(月額)
課税所得690万円以上

(年収約1,160万円以上)

140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満

(年収約770万円以上1,160万円未満)

93,000円(世帯)
市町村民税課税世帯~課税所得380万円未満

(年収約383万円以上770万円未満)

44,400円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税24,600円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税

かつ以下のいずれかに該当

・合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下

・老齢福祉年金受給者

24,600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護を受給している方

・利用者負担を15,000円に減額することで生活保護の受給者とならない場合

15,000円(個人・世帯)

 

【払い戻し例】 市町村民税課税世帯(負担上限額44,400円)の方が、1カ月に介護サービス費を自己負担で60,000円支払った場合。

60,000円(自己負担額)−44,400円(上限額)=15,600円

この場合、上限を超えた15,600円が高額介護サービス費として後から払い戻されます。

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます

 

対象に含まれないサービス

すべての自己負担額が、高額介護サービス費の払い戻し対象になるわけではありません。

以下のような費用は、計算対象には含まれないので注意が必要です。

  • 腰掛便座や入浴補助用具などの特定福祉用具にかかる購入費
  • 手すりの設置や段差解消のための平滑化などにかかる住宅改修の費用
  • 老人ホームのような施設での食費、居住費、日常生活費

 

申請方法

高額介護サービス費の支給対象となった場合、お住まいの市区町村から高額介護サービス費の支給申請書が自動的に送付されます。

自治体で異なる場合もありますが、一般的なケースとして申請時に必要とされるものは以下のとおりです。

  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 振込先口座が分かるもの
  • 印鑑

一度申請することで、該当月であれば次回以降も自動的に指定口座へ振り込まれます。

手続きについて不明な点は、市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。

高額療養費制度

 

高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、1カ月で上限額を超えた場合に、その超えた額が支給される制度です。

これは介護保険ではなく、公的医療保険(健康保険や国民健康保険など)の制度です。

直近12カ月間に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに軽減されます。

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ

高額介護合算療養費制度

 

高額介護合算療養費制度は、1年間に支払った「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担額を合算し、基準額を超えた場合にその超過分が払い戻される制度です。

医療費・介護費が著しく大きくなってしまった世帯の負担軽減を目的としています。

対象となる1年間は、毎年8月1日から翌年7月31日までです。

 

※2025年9月時点

出典:厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について

介護保険外サービスの活用について

介護保険サービスは非常に心強いものですが、定められたルールが複数あり、すべての要望に応えられるものではありません。

そこで役立つのが、介護保険サービスの対象外をカバーしてくれる「介護保険外サービス」です。

介護保険外サービスの対象と費用

 

介護保険外サービスを利用すると、介護保険サービスでは対応できない、以下のような要望に応えることができます。

  • 大掃除、庭の草むしり、ペットの世話
  • 同居家族のための食事の準備や洗濯
  • 通院以外の外出(趣味の買い物や旅行など)の付き添い
  • 洗車・車内の清掃

介護保険外サービスの対象や費用は、サービス内容や事業者によって異なります。

全額自己負担の場合もあれば、自治体から補助を受けられるケースもあるため、事前の確認が大切です。

市区町村によるサービス

 

一部の市区町村では、高齢者が地域で安心して暮らし続けられるよう、独自の支援サービスを設けています。

配食サービスや緊急通報システムの設置、軽度な日常生活の援助など、内容は自治体によってさまざまです。

民間企業に比べて比較的安価な料金で利用できるケースもありますが、所得制限のような利用条件が設けられている場合もあります。

どのようなサービスがあるかは、地域包括支援センターや市区町村の高齢者福祉担当窓口で確認してみましょう。

介護サービス事業者によるサービス

 

訪問介護事業所のような介護サービス事業者が、介護保険サービスとは別に、独自の保険外サービスを提供している場合もあります。

介護保険サービスと組み合わせて利用できる柔軟性が魅力で、訪問介護(保険サービス)の後に、窓拭きや掃除(保険外サービス)を依頼するといったことも可能です。

介護サービス事業者が行う保険外サービスは、介護認定を受けていない高齢者の方でも利用できます。

民間企業によるサービス

 

近年では、家事代行、配食サービス、見守りサービス、買い物代行、通院や外出の付き添いを行う移送サービスなど、さまざまな民間企業が高齢者向けのサービスを展開しています。

選択肢が非常に豊富で、インターネットや電話で気軽に依頼できる手軽さも魅力です。

質の高いサービスを提供する事業者も増えていますが、サービス内容や料金は事業者によって大きく異なるので注意しましょう。

利用を検討する際は、複数の事業者を比較したり、資料を取り寄せたりして、自身のニーズや予算に合ったサービスを慎重に選んでみてください。

要介護1で利用できる施設

要介護1で利用できる施設には、「介護付き有料老人ホーム」「介護老人保健施設サービツ付き高齢者向け住宅」「介護医療院」「住宅型有料老人ホーム」「介護老人保健施設」「ケアハウス」「グループホーム」があります。

それぞれの特徴や、利用できるサービスについて紹介します。

介護付き有料老人ホーム

 

介護スタッフが食事や入浴、排泄などのサポートを行います。介護スタッフは24時間在住しているため、万が一のときでも安心です。

65歳以上の方が対象となるケースが多いですが、自立している方から利用できる施設もあります。

サービス付き高齢者向け住宅

 

65歳以上の方が入居できる、バリアフリーが備わっている賃貸住宅です。「段差がない」「手すりが設置されている」など、高齢者でも安心して利用できる造りになっています。生活相談・安否確認のサービスも受けられます。

介護医療院

 

要介護や認知症の方が対象で、医療や介護のサポートを受けられます。期間は長期的に利用可能で、場合によっては終身利用も可能です。

住宅型有料老人ホーム

 

自立している、または軽度の介護を必要とする方が対象で、食事や洗濯、掃除などの生活におけるサポートを受けられます。

外部のサービスと連携して介護を受けることもでき、必要に応じて適切な介護を受けられるのが魅力です。

比較的、介護度の低い方が入居できる施設となっているため、介護度が高い方や医療依存度の高い方は入居できない可能性があります。

介護老人保健施設

 

病院を退院してから自宅に戻るまでの期間、医療ケアやリハビリ、介護サービスを受けるために入居する施設です。

病院に併設されていることが多いため便利です。注意点としては、入居できる期間が3カ月までと定められていることです。

在宅復帰を目指せる施設のため、安心して在宅に戻れるでしょう。

ケアハウス

 

何かしらの事情で家族からの介護を受けられず、一人で生活することが難しい方が利用できる施設です。万が一入居している期間に要介護度が高くなったとしても、入居し続けられるのは非常にありがたいです。

グループホーム

 

65歳以上で認知症と判断されており、施設と同じ市区町村に住民票がある方が入居できる施設です。少人数でアットホームな雰囲気で、入居者や介護職員と交流しながら暮らせます。

利用する施設やサービスの探し方・選び方

介護施設やサービスを利用したいものの、どのように選べばいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

どのような施設やサービスを選ぶかによって、介護生活の充実度が異なるため、慎重に検討しましょう。

ここからは利用する施設やサービスの探し方・選び方を解説します。

介護施設の探し方

 

代表的な施設探しの方法としては、以下のようなものがあります。

1つだけでなく、複数の方法を組み合わせて情報を集めるやり方がおすすめです。

 

ケアマネジャーに相談する

在宅サービスを利用中の場合、担当のケアマネジャーは施設探しにおける最初の相談相手として最適です。

ケアマネジャーは利用者の心身の状態や性格、生活歴を深く理解しています。

その上で地域の介護情報にも詳しいため、条件に合った施設を客観的な視点で提案してくれるでしょう。

 

地域包括支援センターを利用する

地域包括支援センターは、市区町村が運営する高齢者のための公的な総合相談窓口です。

社会福祉士や保健師といった専門職員が、介護に関するあらゆる相談に無料で対応してくれます。

中立的な立場から地域の施設情報を提供し、施設選びのアドバイスをしてくれるのが特徴です。

どこに相談すべきか分からない場合は、地域包括支援センターを利用してみましょう。

 

老人ホーム紹介センターを利用する

老人ホーム紹介センターは、公的機関や民間企業が運営する無料の相談窓口です。

専門の相談員が、希望エリアや予算、医療ニーズなどを細かくヒアリングし、膨大な施設情報の中から候補を絞り込んで提案してくれます。

施設探しに慣れていない方にもおすすめです。

 

介護サービス情報公表システムを利用する

厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」は、全国の介護事業所情報を検索できる公的なウェブサイトです。

施設の基本情報に加え、料金体系、職員の人数、サービス内容といった詳細な情報が閲覧できます。

客観的なデータに基づいて、複数の施設を比較検討したい場合にも役立つツールです。

 

老人ホーム検索サイトを利用する

さまざまな事業者が運営している老人ホーム検索サイトは、24時間いつでも自分のペースで情報を集めたい場合に便利です。

エリアや予算などの条件で簡単に絞り込み検索ができ、写真や動画、利用者の口コミなども掲載されています。

施設の雰囲気や実際の暮らしをイメージしながら探せる点がメリットです。

利用する施設を選ぶポイント

 

デイサービスやショートステイを利用する方は、自宅から通いやすい距離だと便利です。施設に入居する場合は、ご家族の自宅からの距離を考慮するのがよいでしょう。

施設に行く回数が多いにもかかわらず、自宅から遠いとかなりの負担になってしまいます。

生活に支障が出ないように施設に通うためにも、状況に応じて立地場所を見ておくことが大切です。

また設備の充実度を把握しておくと、利用者が不安を抱えることなく、気持ちよく施設での生活を送れるでしょう。

そのほかに見ておくポイントは以下のとおりです。

  • 入居にかかる費用
  • 施設や職員の雰囲気
  • どのような介護・医療体制が整っているのか
  • 入居条件に当てはまるか

利用するサービスを選ぶポイント

 

介護サポートを利用する目的をはっきりとさせることが大切です。

「日常生活におけるサポートを受けたい」「リハビリを行いたい」「周りの方との交流を大切にしたい」など、大切にしたい項目はさまざまです。

介護サポートを受ける方に、どのようなサポートを受けたいかを事前にヒアリングしておくことで、利用後のミスマッチを防げます。

まとめ

この記事では、要介護1の方が受けられるサービスや利用できる施設、かかる費用などを解説しました。

初めてのことで不安な方もいるかと思いますが、事前に利用できる内容を知っておくことで、万全な準備をして介護生活を送れるはずです。

利用する本人やご家族の意見も踏まえながら、最適な介護サービスを受けましょう。