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ケアマネジャーの給料はどれくらい?ほかの職種との差や目指し方を解説

ケアマネジャーの給料はどれくらい?ほかの職種との差や目指し方を解説

ケアプランの作成を行うケアマネジャーの給料はどれくらいなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

ほかの福祉系の職種に比べてケアマネジャーは人数が少ないことから、給料は高めに設定されていると思われがちですが、職場や役職によっても大きく異なります。

本記事では、ケアマネジャーの給料の相場やキャリアアップの方法、さらに今後の動向についても解説します。

ぜひ参考にしてください。

ケアマネジャーの基本的な給料相場

ケアマネジャーの給料の相場はいくらぐらいでしょうか。

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに解説していきます。

ただし、職場や勤務地、役職の有無などによって金額は異なるため、あくまで参考として捉えてください。

給与の平均

 

「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、ケアマネジャー(介護支援専門員)の毎月決まって支給される平均月給は30.1万円、賞与が67.6万円、年収が428.8万円です。

介護士や看護師のように夜勤は少ないため月ごとの変動は少なく、残業代を除けば毎月ほぼ同じ金額になるでしょう。

参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査

他職種の給料との差

 

国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、全産業の平均年収は460万円となっており、ケアマネジャーの給料はそれよりも低いことになります。

ただし、介護職員の平均年収である376万円と比べると、ケアマネジャーのほうが高いことが分かります。

夜勤がほとんどないうえに、年間50万円もの差はかなり大きく感じられるでしょう。

参照:国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」

参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査

ケアマネジャーの給料が高い理由

 

法務省に登録されている介護福祉士の人数は、令和6年9月末時点で200万2,061人です。

それに対して、介護支援専門員の資格を保有している人は73万9,215人しかいません。

加えて、そのうちケアマネジャーとして業務に従事しているのは、18万8,170人だけです。

ケアマネジャーは介護士に比べて人数が少ないうえ、ケアマネジャーになるための「介護支援専門員」の取得に時間がかかるため、介護士よりも給料が高く設定されていると考えられます。

ケアマネジャーの給料に影響する要因とは

同じケアマネジャーでも、さまざまな条件によって給料に違いが生じます。

職場の違いや地域差、経験年数といったそれぞれの違いについて紹介します。

居宅と施設の違い

 

居宅と施設を比べると、同じ介護職従事者でも平均給与に違いが生じます。

厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(161頁)」によると、介護職員等処遇改善加算を取得している事業所における、介護支援専門員の資格を保有する月給制介護職員の施設形態別の平均給与は以下のとおりです。

 施設形態平均給与月額平均年収(月収✕12)
介護

施設

介護老人福祉施設

(特養)

41.6万円499.2万円
介護老人保健施設

(老健)

40.3万円483.6万円
グループホーム35.8万円429.6万円
特定施設入居者

生活介護事業所

39.9万円478.8万円
居宅

介護

小規模多機能型

居宅介護事業所

35.4万円424.8万円
デイサービス34.1万円409.2万円
訪問介護事業所39.1万円469.2万円

 

ただし、このデータにはケアマネジャー以外の介護職従事者も含まれています。

居宅よりも施設のほうが給与水準が高いことを示す目安の一つとしてご覧ください。

参照:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果

 

【居宅ケアマネ】

居宅介護支援事業所に在籍し、自宅で生活している高齢者に対してケアプランの作成や介護サービスの手続きなどを行います。

事業所に勤務しながらも定期的なアセスメントやモニタリング、ケアプランの契約や更新手続きのために、利用者宅への訪問も必要です。

事業所のケアマネジャーとして雇用されるほか、独立開業という選択肢もあります。

 

【施設ケアマネ】

特養や老健、グループホームなどの施設に在籍するケアマネジャーです。

居宅のように利用者宅を訪問する必要はありませんが、施設に入居している利用者に対してケアプランの作成や更新、モニタリングなどを行います。

新規入居の際には利用者の自宅へ赴き、アセスメントを行う場合もありますが、基本的には勤務は施設内のみです。

施設によっては介護業務や夜勤業務を兼任することもあり、その場合は給料も上がります。

居宅と比べると業務の範囲が広いため、居宅のケアマネジャーより給料が高めに設定されていると思って良いでしょう。

 

【地域包括支援センター】

地域包括支援センターとは市区町村が運営している機関で、地域の高齢者への福祉サービスの充実を目的としています。

居宅や施設と同様に、ケアマネジャーや主任ケアマネジャーが在籍しており、介護保険サービスに限らず、幅広いニーズに対して地域資源を活用してサービスを届けることが主な業務です。

地域包括支援センターにはケアマネ以外にも保健師や社会福祉士が在籍しており、それぞれの得意分野を活かしながら、高齢者や障害者のさまざまな課題の解決を担っています。

行政機関ですが、民間の居宅や施設のケアマネジャーと比べ、給与にそれほど大きな違いはありません。

地域差

 

厚生労働省によると、主要都市のケアマネジャーの平均給料の違いについては以下の通りです。

都道府県平均月給平均賞与平均年収
全国30.1万円67.6万円428.8万円
北海道27.9万円58.2万円393.0万円
宮城25.7万円67.3万円375.7万円
東京33.1万円59.1万円456.3万円
神奈川33.8万円81.0万円486.6万円
愛知29.1万円65.6万円414.8万円
大阪30.7万円60.2万円428.6万円
沖縄24.4万円30.1万円322.9万円

 

※年収は、毎月決まって支給される現金給与額×12か月分+年間賞与その他特別給与額で算出しています。

東京や大阪では平均月収は全国平均よりも高いものの、賞与は平均よりも低い金額です。

神奈川県は月給、賞与とも全国平均を上回っており、沖縄と比べると年収の差は160万円以上です。

ケアマネジャーの給料は、地域差によってかなり大きく増減することが分かります。

参照:厚生労働省「都道府県、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(全国〜埼玉) (千葉〜愛知) (三重〜山口) (徳島〜沖縄)

経験年数による違い

 

厚生労働省によれば、ケアマネジャーの経験年数による収入の違いは以下の通りです。

経験年数平均月収平均賞与平均年収
0年27.8万円10.0万円343.6万円
1〜4年26.7万円58.9万円379.3万円
5〜9年28.4万円63.1万円403.9万円
10〜14年28.0万円63.6万円399.6万円
15年以上30.2万円75.3万円437.7万円

 

※年収は、所定内給与額×12か月分+年間賞与その他特別給与額で算出しています。

ケアマネジャーの平均収入は経験年数に比例して増加していくのが特徴です。

一定の期間は停滞が見られますが、その後も継続的に続けていれば15年目以降も収入は上がっていくことが分かります。

参照:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査

役職による差

 

複数名のケアマネジャーをまとめるのが「主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)」です。

主任ケアマネジャーになると、施設や事業所の運営も任されるようになり、新人教育や事業所全体の管理なども行います。

管理職手当を支給される場合が多いため収入も増加し、年収500万を超える場合もあります。

介護報酬や処遇加算の改訂

 

3年に一度の介護保険制度改正により、介護報酬も改定されます。

2012年には「介護職員処遇改善加算」が創設され、介護職員の平均年収は少しずつ向上していますが、処遇改善加算の対象にケアマネジャーは含まれていません。

処遇改善加算は施設や事業所の判断によって介護職員以外への支給も認められていますが、職場によって判断が異なるため、求職の際には加算の有無も含めて検討する必要があります。

ケアマネジャーの給料を上げるには

ケアマネジャーが給料を上げるには、経験年数を蓄積することや主任ケアマネのポストに就くことが考えられます。

すでにケアマネジャーとして就業している方だけでなく、これからケアマネジャーを目指す方も参考にしてください。

経験年数を重ねる

 

ケアマネジャーの業務には、専門的な知識と高いコミュニケーション技術が求められるため、経験によって着実にスキルアップしていくことが大切です。

基本的には経験年数を積み上げることによって収入も増加していくため、一つの職場である程度の期間は働き続けることが必要になります。

特に、給与査定が定期的にある場合は、長く勤めたほうが査定の機会も多くなるでしょう。

主任ケアマネジャーになる

 

主任ケアマネジャーになることで、役職手当がつく場合があります。

また、給与査定でも良い結果が得られることでしょう。

主任ケアマネジャーは人材育成や施設運営といった重要な業務を担うことになるため、給与水準も向上します。

ケアマネジャーとして5年以上の実務経験があれば取得が可能ですので、一度検討してみても良いでしょう。

転職する

 

事業所によっては、給与が頭打ちでこれ以上は上がらないといったこともあります。

特に居宅の事業所では規模が小さいこともあり、給与水準が低い場合もあるでしょう。

ある程度スキルを磨いたら、より待遇の良い職場に転職するのも選択肢の一つです。

この場合も、経験年数の蓄積や主任ケアマネジャー資格の保有によって好条件が望めます。

独立する

 

新たに居宅介護支援事業所を立ち上げ、独立するのも一つの手です。

実力に自信があれば、工夫次第で業績を高めることもできるでしょう。

最初のうちは自宅を事業所にすることで、減税や通勤時間の解消といった恩恵も受けられます。

ただし、ケアマネジャーの業務だけでなく、事業所の運営や会計処理なども自分で行わなければならず、かなり忙しくなるでしょう。

収益が思っていたより上がらず破産するリスクもあるため、独立を考えている場合はビジネスの知識やスキルなどもしっかりと勉強し、準備を十分に整えることが大切です。

ケアマネジャーになるには

ケアマネジャーになるためには、介護支援専門員の資格の取得が必要です。

受験資格を得るまでにも時間がかかり、手続きに失敗すると、さらに1年待たなければなりません。

失敗しないよう、あらかじめ具体的な手順を確認しておきましょう。

また、介護支援専門員は都道府県が認定するため、各地域によって細かい点で条件が異なる場合があります。

必ずお住まいの都道府県の公式ページや担当の部署で、確認するようにしましょう。

STEP1.受験資格の要件を満たす

 

2018年に介護支援専門員の受験資格が厳格化され、現在では2つのルートがあります。

1つは下記に該当する資格で5年間の実務経験があり、通算900日以上従事していることが条件です。

  • 医師
  • 歯科医師
  • 薬剤師
  • 看護師/准看護師
  • 保健師
  • 助産師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 介護福祉士
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 視能訓練士
  • 義肢装具士
  • 歯科衛生士
  • あん摩マッサージ指圧師
  • はり師/きゅう師
  • 柔道整復師
  • 栄養士/管理栄養士

 

もう1つは、上記の資格を保有していない場合の方法です。

生活相談員や支援相談員、主任支援相談員として相談援助業務で5年以上の実務経験があり、通算900日以上従事していることが条件となります。

STEP2.介護支援専門員資格試験の合格

 

受験資格が得られたら、受験のための願書を取得します。

願書は市区町村の介護福祉課や社会福祉協議会などで配布していますが、郵送での取り寄せも可能です。

実務経験を記載する用紙は職場に記入を依頼しなければいけないため、受付の締切日ぎりぎりではなく、十分に余裕を持つようにしましょう。

願書提出時に実務経験が5年に満たない場合でも、試験日前日までに5年の実務経験を得られるのであれば、見込みとして受験が可能です。

試験日は毎年10月で出題される範囲は広く、資格試験の中でも難しい部類に含まれます。

STEP3.介護支援専門員実務研修の受講

 

見事試験に合格しても、すぐにケアマネジャーとして働くことはできません。

介護支援専門員実務研修の修了が必要で、ケアプランの作成などを講義と演習で合計87時間受講します。

研修の最後には「修了評価」があり、合格しなければなりません。

研修のスケジュールには定員があるため、希望日を早めに押さえておくことも大切です。

STEP4.介護支援専門員として登録

 

修了評価を終えて研修修了書を受け取ったら、3ヶ月以内にケアマネジャーの登録申請を行います。

すぐにケアマネジャーとして従事したい場合は、介護支援専門員証の交付申請も同時に行いましょう。

資格取得後は5年ごとの更新と研修の受講が必要です。

ケアマネジャーに向いている人の特徴

ケアマネジャーは多くの利用者を担当し、多くの業務を処理しながら面談や契約の説明なども行うため、多くのスキルが必要です。

ケアマネジャーに向いている特徴を以下にまとめたので、参考にしてみてください。

コミュニケーションが好き

 

利用者やご家族との円滑なコミュニケーションを図ることが、ケアマネジャーには求められます。

サービス内容に関する意向を聞いたり、ケアプランの説明をしたり、苦情を聞いたりといったこともケアマネジャーの業務です。

コミュニケーションが得意であることは、求められるでしょう。

優先順位が決められる

 

定期的なモニタリングやケアプランの更新をしながら、介護サービスの手続き、新規の利用者との契約、さらには緊急対応での苦情の聞き取りなど、ケアマネジャーは多くの業務を抱え込むことになります。

手続きには期限があるものも多いため、優先順位をつけながら業務を遂行できる能力が必要です。

常にマルチタスクを抱えている状況に耐えられる精神も大切でしょう。

分析能力が高い

 

ケアマネジャーには高い分析力も必要で、利用者の状態は日々変化します。

変化に気づいて早めに対処することができなければ、のちのち大きな問題となってしまうかもしれません。

普段から利用者をよく観察して正しく分析することで、より良いケアプランの作成が可能となります。

ケアマネジャーの今後

ケアマネジャーを取り巻く環境も、少しずつ変化していきます。

最後に、ケアマネジャーの今後について解説します。

受験資格の厳格化

 

2018年にケアマネジャーの受験資格が厳格化されました。

以前は介護の実務経験が10年以上あれば資格の有無にかかわらず受験可能でしたが、法改正によって特定の資格での実務経験が必須になりました。

需要の増加

 

2018年をピークに、介護支援専門員試験の受験者は減少傾向です。

しかし、2040年には要介護者の総数がさらに増え、ケアマネジャーも現在より8万人の増員が必要との試算があります。

今後もケアマネジャーの需要は拡大し続けるため、処遇加算も含めた給与体系の見直しが期待されます。

AI化される?

 

AIの進化により、ケアプランの作成など一部のケアマネジャー業務が自動化される可能性はあるでしょう。

たしかに、情報をもとにしたケアプラン作成や記録管理といった作業は、AIが担える領域となりつつあります。

しかし、利用者やご家族との面談、ニーズの把握や関係機関との調整など、人間だからこそできる業務も多く存在します。

特に相手の感情や背景に寄り添った対応は、AIには代替しきれません。

そのため、AIによって一部業務が効率化されることはあっても、ケアマネジャーが不要になるという状況は現実的ではなく、むしろ人間の役割がより明確になると考えられます。

まとめ

ケアマネジャーの給料は、全産業の平均と比べてやや低い傾向があります。

処遇改善の対象外であることや、規模の小さい居宅介護支援事業所では給料が上がりにくいことも理由の一つでしょう。

しかしながら、経験年数の蓄積や主任ケアマネジャーへの転身などによって給料を上げることは可能です。

コミュニケーションが得意で分析能力の高い人などにとっては、自身の経験と能力を最大限に活用できる職種でしょう。