【介護コラム】ALS(コイツ)と戦うー第5話ー

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介護ヘルパーとALSを発症した医師との実話
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今日できたことが明日できるとは限らないのがALSだ。入浴中の動作一つ一つをSさんと一緒に考え、彼になるべく負荷がかからないように動かなければならない。
集中力とスピード・丁寧さを切らさぬよう脱衣・洗身をすませ、いよいよ浴槽へ移る動作に入る。通常のケアであれば、立位から向きを変え移乗をするのだが、浴室の濡れた床ではリスクが高く、その方法をとることはできない。立ち上がることが難しい場所だからと、浴槽へ入ることをあきらめないのが彼のすごいところだ。
その気持ちにこたえるため、立ち上がらずに移乗する方法を模索した。
先ずシャワーチェアごと彼の向きを浴槽と平行にする。正面に向き合い、彼の両脇に背面から手を差し込む。そして彼の右のつま先を私の左土踏まずの下に噛ませ、そこを中心に反時計回りにスイングするように体を振り、リフトの座面中央めがけて着座させるのである。もはや介助というよりも、サーカスの妙技のようである。
つづく