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老健(介護老人保健施設)とは?気になる特徴や入所費用、選び方を徹底解説

老健(介護老人保健施設)とは?気になる特徴や入所費用、選び方を徹底解説

身近な人が介護を必要とするようになり、入所先を探している方もいるのではないでしょうか。

数ある介護施設の中でも、老健(介護老人保健施設)はリハビリや医療ケアを通じて、要介護者が在宅復帰を目指すことを支援する施設です。

本記事では老健とはどのような施設なのか、費用や入所条件、ほかの施設との違いまで解説します。

老健について詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

老健(介護老人保健施設)とはどんな施設?

老健(介護老人保健施設)は、リハビリや医療ケアを受けながら在宅復帰を目指せる介護施設です。

とはいえ、実際に利用した経験がなければ、かかる費用や入所条件などの具体的な特徴をイメージするのは難しいかもしれません。

まずは、老健の特徴やサービス内容などについて詳しくご紹介します。

老健(介護老人保健施設)とは

 

老健とは、病院での治療を終えた要介護者が在宅復帰することを目的として、リハビリや日常生活のサポートを受けられる介護保険施設です。

医師や看護師、理学療法士などが利用者の健康状態や目標に合わせたサポートを行い、心身機能の維持や回復を図ります。

あくまでも在宅復帰を目標としているため入所期間は基本的に3カ月~半年ほどで、長期的な入所を目的とした施設ではありません。

中には、特別養護老人ホームの空きを待つ間に利用する方もいます。

老健(介護老人保健施設)の費用

 

老健の月額費用は施設や要介護度、居室の種類などに応じて異なりますが、8万~20万円ほどです。

内訳には居住費をはじめ、食費や日用品費、介護サービス費などが含まれています。

また、一般的に民間の施設であれば入所時にまとまった費用を求められる場合がありますが、老健は国が定める公的な施設ですので、入所一時金などの初期費用はかかりません。

民間の介護施設と比較すると、費用は安く抑えられるでしょう。

老健(介護老人保健施設)の入所条件

 

老健の入居条件は、要介護1の認定を受けている高齢者であることです。

要介護認定は原則65歳以上で受けられるため、基本的には65歳以上の方が入所します。

ただし、40歳以上64歳以下の方でも、特定疾病で介護を必要とする場合に要介護認定を受けられるため、入所できるケースもあります。

また、認知症ケアを中心とした老健もあり、条件を満たしていれば入所が可能です。

不安なときは、入所前にどのような対応ができるのかを相談してみましょう。

老健(介護老人保健施設)のサービス

 

老健では、医師の指導のもと、看護師や理学療法士などの専門職を中心に、在宅復帰を目指す利用者に対して以下のようなサービスを提供しています。

  • リハビリ
  • 医療・看護ケア
  • 日常生活の介助
  • 栄養管理
  • レクリエーション

 

詳しいサービス内容を一つずつ見ていきましょう。

 

【リハビリ】

在宅復帰に欠かせないのが、日常生活を想定したリハビリです。

老健では、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが、利用者の課題や目標に合った計画を立てて訓練を行います。

リハビリのメニューは、歩行や立ち上がりといった基本動作の改善や、自分で食事や着替えができるようになるための訓練、認知機能のリハビリなどさまざまです。

また、施設によっては、要介護者のご家族に向けた福祉用具の活用や家庭での介護などの指導が可能な場合もあります。

 

【医療・看護ケア】

老健は、施設基準として医師や看護師の常駐が義務付けられており、日常的な医療・看護ケアが受けられます。

毎日の健康チェックや服薬管理、病状の観察など、医療と介護の両面から支えてもらえるのも大きな特徴です。

日中だけでなく夜間でも医療ケアが受けられるので、痰の吸引やインスリン注射、経管栄養などが必要な利用者も安心して過ごせるでしょう。

在籍する医師や看護師の人数と可能なケアの種類は施設によって異なるため、事前に確認するのがおすすめです。

 

【日常生活の介助】

老健では、介護スタッフが入浴や排泄、食事などの介助をしてくれます。

何もかもをサポートするのではなく、利用者の状態や機能に合わせた介助が行われるため、適切な支援を受けながら徐々にできることが増えていくでしょう。

生活支援サービスとして、居室の清掃やシーツ交換、着替えのサポートなども受けられます。

ただし、洗濯や買い物代行などのサービスが提供されるかどうかは施設によって異なるので、あらかじめサポート範囲を把握しておきましょう。

 

【栄養管理】

老健では、入所定員が100名以上の場合は、栄養士を配置することが義務付けられています。

そのため、利用者一人ひとりの健康状態に合わせて、バランスのとれた食事の提供が可能です。

また、かむ力や飲み込む力が低下している利用者のために、刻み食やミキサー食を用意するなど、食事形態や調理方法にも配慮してくれる施設が多いようです。

糖尿病などの疾患に合わせた、独自のメニューを提供してもらえる場合もあります。

 

【レクリエーション】

老健でも、日々の生活に楽しみや刺激を与えるために、手作業や季節行事などのレクリエーションを実施する施設があります。

しかし、医療ケアやリハビリが中心で、有料老人ホームなどと比べるとレクリエーションの頻度や内容は充実していない場合がほとんどです。

機能訓練やリハビリの一環として行われているところが多いため、充実したレクリエーションを求めるのであれば、ほかの介護施設を検討しましょう。

老健(介護老人保健施設)の設備

 

老健の設備は、大きく分けると居室と共有スペースの2つがあります。

居室の広さは、個室であれば10.65㎡以上、2~4人の多床室では一人あたり8㎡以上が必要であると定められています。

ほかにも、ユニット型の個室や多床室が用意されている施設もあるので、チェックしておきましょう。

個室ではプライバシーを確保しやすく、多床室は費用を抑えられるというメリットがあります。

また、共有スペースには食堂や機能訓練室、浴室などの設置が義務付けられていて、利用者が過ごしやすい設備が整っています。

老健(介護老人保健施設)の職員体制

 

老健において必要な人員は以下のとおりです。

職種人員
医師常勤1以上、100対1以上
薬剤師300対1を標準とし、実情に応じた適当数
看護・介護職員3対1以上、うち看護職員は2/7程度
支援相談員1以上、100対1以上
理学療法士、 作業療法士または言語聴覚士100対1以上
栄養士入所定員100以上の場合に1以上
介護支援専門員100対1を標準とし、1以上
調理員、事務員、そのほかの従業者実情に応じた適当数

 

このように、老健では医師や看護師をはじめとするさまざまなスタッフが、連携を取りながら利用者をサポートします。

医療と介護の専門職が多く在籍しているため、困ったときに相談しやすいのもポイントです。

参照:厚生労働省「介護老人保健施設(参考資料)

老健(介護老人保健施設)の1日のスケジュール

 

老健の1日は朝6時ごろの起床から始まり、午前中は以下のような活動が行われます。

  • 朝食や服薬
  • 洗顔や着替えなどの身支度
  • 入浴介助
  • 検温などのバイタルチェック
  • 個別または集団リハビリ

 

午後は軽い体操や個別のリハビリなどを中心に過ごし、談話スペースでほかの利用者との交流を楽しむことが多いようです。

また、夜は夕食をとった後、服薬や排泄を済ませて21時ごろに就寝準備に入ります。

就寝後にもスタッフによる巡回が行われるので、問題が起こった場合でもすぐ対応してもらえるでしょう。

老健(介護老人保健施設)に入所するまでの流れ

老健に入所するには、いくつかの手続きや準備が必要です。

いきなり申し込むことはできず、まずは介護認定を受けなくてはいけません。

その後、施設の見学や申し込み、書類の提出や面談を経て、入所の可否判定がなされます。

老健に入るまでの具体的な流れを、ステップごとに分かりやすく解説します。

介護認定を受ける

 

老健に入所するには、要介護1以上の介護認定を受けていることが条件です。

要介護認定を受けていない場合は、現在住んでいる市区町村の地域包括支援センターや役所窓口に申請する必要があります。

認定結果が出るまでには約1カ月かかるので、計画的に申請しておきましょう。

また、すでに認定を受けている方が入所する場合は、このステップは必要ありません。

入所申し込みをする

 

要介護認定を受けたら、希望の施設に直接申し込みをします。

とはいえ、それぞれの施設の情報収集は難しいので、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどに相談しながら進めるとよいでしょう。

施設によっては空きがなくすぐに入所できない場合もあるので、初めから一つに絞らず複数の施設を候補にしておくのが無難です。

面談や書類提出を済ませる

 

申し込み後は、まず施設担当者が本人や家族と面談をします。

健康状態や普段の様子、現在までの介護の状況などについて聞かれるので、どのようなサポートやケアが必要かを具体的に伝えておくと安心です。

また、面談を済ませたら必要な書類を準備します。

  • 施設利用申込書
  • 健康診断書または診療情報提供書
  • 看護サマリー(病院やほかの施設から直接入所する場合)

 

余裕を持ってそろえるようにしましょう。

入所判定後契約する

 

面談や書類の内容をもとに入所判定が行われ、入所が決まり次第、空き状況などを踏まえて契約や入所日の説明などが案内されます。

場合によっては数カ月ほどの待機期間が発生することもありますが、この期間に生活用品の準備や引っ越しの段取りを進めておくとよいでしょう。

また、契約書などに不明点があれば、遠慮せず施設に確認することが大切です。

老健(介護老人保健施設)に入所するメリットとデメリット

要介護者が在宅復帰を目指せる老健ですが、入所にはメリットとデメリットがあります。

両面を把握しておくことで、より納得感のある施設選びができるでしょう。

ここでは老健のメリットとデメリットを紹介するので、入所を検討されている方はぜひ参考にしてください。

老健(介護老人保健施設)に入所するメリット

 

老健のメリットは、理学療法士や作業療法士などのリハビリの専門職が常駐していて、質の高い機能訓練が受けられることです。

個人の能力や目標に合わせた計画を立てて訓練を行うため、効率よく在宅復帰を目指せます。

また、民間の有料老人ホームなどと比べると出費を抑えられるのもうれしいポイントです。

老健は公的施設のため、初期費用はかかりません。

さらに、運営にあたって社会福祉法人や自治体などから公的な補助を受けており、月額料金もリーズナブルな傾向があります。

誰でも安心して介護サービスや医療ケアを受けられることも、選ばれる理由の一つです。

老健(介護老人保健施設)に入所するデメリット

 

入所の前に知っておくべき注意点もあります。

まず、老健では入所期間を原則3~6カ月としています。

看取りに対応している施設もありますが、あくまでも在宅復帰が目的であり、長期的な施設の利用を検討している方には不向きかもしれません。

また、介護度が比較的低い方でも入所できる老健ですが、医療保険が使えないので、高度な医療ケアや高価な薬の処方には制限があります。

持病が重い方や特別なケアを必要とする方は、医療体制が不十分だと感じることもあるでしょう。

老健(介護老人保健施設)を選ぶ際のポイント

老健を選ぶ際は、費用や設備以外に施設の実績や万が一のことが起こった場合の対応などを確認することが大切です。

施設ごとに方針やサービス内容が異なるため、見学や職員との面談を通じて、本人の状態や希望に合うかを見極めましょう。

在宅復帰率を確かめる

 

在宅復帰を目指すための施設選びで確認してほしいのが、在宅復帰率です。

在宅復帰率は、老健入所者のうち入所期間を経て在宅復帰できた人の割合を示しており、数値が高いほどリハビリやケアが行き届いている傾向があります。

反対に在宅復帰率が極端に低い場合は、リハビリや機能訓練よりも介護や生活支援が中心になっている可能性があります。

在宅復帰率は、施設の公式サイトやパンフレットなどで確認できることもありますが、記載がないときは見学時などに質問してみましょう。

待機期間を考慮する

 

老健の利用希望者は、退院が近いなど緊急を要しているケースもありますが、申し込みをしてもすぐに入所できるとは限りません。

人気の高い施設は待機期間が長くなることもあり、タイミングが合わずに数カ月待つケースも少なくありません。

加えて老健は人の出入りが激しく、入所希望者やご家族が細かく空き状況を把握するのは困難です。

そのため、検討する際は複数の施設を見学したり、ケアマネジャーと空き状況をこまめに確認したりする必要があります。

また、施設の希望条件を見直すことで選択肢が広がることもあるかもしれません。

待機期間があることも想定して、早めに施設探しを始めましょう。

看取り状況を知る

 

老健は、基本的に在宅復帰を目指してサービスを提供しますが、時には看取りが必要になることもあります。

万が一の場合に備えて、施設の看取り方針を確認しておきましょう。

看取り対応は、一般的にターミナルケアと呼ばれる身体的・精神的なケアが行われます。

また、施設によっては利用者が亡くなった月に、ターミナル加算として月額料金が上乗せされるところも少なくありません。

老健(介護老人保健施設)がおすすめな人

 

老健は、リハビリや医療ケア、生活支援などを受けながら在宅復帰を目指す方におすすめの施設です。

具体的には、以下のようなケースに適しています。

  • 退院後すぐに自宅で生活するのが難しい
  • 高齢で定期的な医療的ケアを必要としている
  • ご家族が一時的に在宅介護を離れるためのショートステイ

 

老健を選ぶ際のポイントを踏まえて、自分やご家族に合った施設を選びましょう。

老健(介護老人保健施設)とほかの施設との違い

ここでは、老健と間違えやすい特別養護老人ホーム(特養)と有料老人ホームの2つの介護施設についてご紹介します。

リハビリや生活支援が行われる点は同じですが、それぞれの施設には大きな違いがあります。

正しく特徴を押さえて、適切な施設を検討しましょう。

老健(介護老人保健施設)と特別養護老人ホーム(特養)との違い

 

特別養護老人ホーム(特養)は、比較的介護度の高い高齢者が生活するための施設です。

特養は、老健よりも高い要介護度(要介護3以上)が入所条件とされており、終身利用を前提としている点が異なります。

機能訓練や介護サービスに加えて利用者の刺激や楽しみになるようなレクリエーションが充実している反面、老健以上に入所希望者が多く、1年以上かかるケースも少なくありません。

老健(介護老人保健施設)と有料老人ホームとの違い

 

有料老人ホームは、民間企業が運営する、高齢者が快適に安心して暮らすための施設です。

入所条件はほとんどなく、多くの施設が65歳以上の高齢者を対象にしています。

また、特別養護老人ホームと同じく、長期利用が可能です。

老健と比べると、生活支援やサークル活動などの娯楽が充実しており、多くの場合、利用者ごとに個室が用意されていて過ごしやすいという側面があります。

ただし、サービスが充実している分、費用は老健よりも高額になってしまう点に注意しましょう。

まとめ

老健は、在宅復帰に向けて必要なリハビリや医療ケアが受けられる介護施設です。

特別養護老人ホームや有料老人ホームとは異なり、入所期間はおよそ3~6カ月と短く、リハビリや機能訓練を中心としています。

サービスの特徴や雰囲気は施設によって多様であり、入所を検討する際は費用や設備などを確認しておきましょう。

不安や疑問点があれば、ケアマネジャーなどに相談しながらニーズに合う施設を見極めましょう。