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2024年改正にも対応!介護保険の負担割合の仕組みと軽減制度を解説

2024年改正にも対応!介護保険の負担割合の仕組みと軽減制度を解説

2024年に介護保険法が一部改正され、自己負担割合の変更に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

負担割合の変化によって、今までよりも費用が高くなるのではと心配する声が増えています。

本記事では、介護保険制度における介護報酬の基本や、負担割合の新しい判定方法、各サービスの負担額について分かりやすく解説します。

後半では、費用負担を軽減する方法も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

介護保険の負担割合とは?

介護保険の負担割合とは、介護サービスを利用した際に利用者が支払う負担金の割合のことです。

原則として1割負担ですが、所得の高い人は2割や3割の負担となる場合もあります。

所得や世帯構成などによって個別に判定され、負担割合が決定される仕組みです。

介護保険制度における介護報酬の基本的な仕組み

 

介護報酬は、介護事業所がサービスの対価として受け取る収入のことです。

介護保険制度では、利用者が支払う自己負担(1~3割)と、保険料や公費(7~9割)が合わせて10割になるように設定されており、介護事業所は国民健康保険団体連合会(国保連)に請求して報酬を得ます。

介護報酬は、要介護度が軽いほど金額が安く、重いほど高くなります。

2024年の介護保険法改正による負担割合の変更

 

介護保険法は3年に一度の見直しが義務付けられています。

2024年の改正案で、これまで所得に応じて1割・2割・3割であった利用者負担が「原則2割」になると発表されましたが、後に撤回されました。

現在1割負担の人にとって2割負担は、利用料が単純に倍になるわけですから、大きな負担になっていたと考えられるでしょう。

今回の改正案では見送りとなりましたが、今後改正される可能性は否定できません。

介護保険の負担割合が決まる仕組み

介護保険の負担割合は、利用者の前年の所得や世帯状況などに基づいて、市区町村が毎年判定を行い、年に一度見直しが行われる仕組みです。

第1号被保険者と第2号被保険者で異なる

 

第1号被保険者は65歳以上の高齢者が該当し、所得と世帯構成によって1~3割の負担割合が決まります。

第2号被保険者とは、40歳から64歳以下で健康保険とともに介護保険料を支払っている方です。特定疾病によって介護が必要となった場合に、一律1割の負担割合で介護サービスを利用できます。

負担割合の判定方法

 

負担割合の判定は、世帯における65歳以上の高齢者の人数、本人の合計所得金額と年金収入の額から、市区町村が一定の基準に照らして行われます。

下記は、世帯内に高齢者が一人の場合の負担割合判定条件です。

 

合計所得金額年金+そのほかの所得負担割合
160万円未満1割
160万円以上

220万円未満

280万円未満1割
280万円以上2割
220万円以上280万円未満1割
280万円以上

340万円未満

2割
340万円以上3割

合計所得金額とは

 

介護保険の負担割合の判定には、まず合計所得金額を求めなければなりません。

合計所得金額とは、年金や給与収入から公的年金控除や給与所得控除などを差し引いた後の金額で、社会保険料控除や医療費控除などを差し引く前のものになります。

年金収入に含まれるものと含まれないもの

 

負担割合の判定に使われる年金収入は、市民税の課税対象となる国民年金や厚生年金、共済年金などで、介護保険料が差し引かれる前のものです。

ただし、遺族年金や障害年金、老齢基礎年金などは含まれません。

実際の年金振込額とは異なるため、詳しく知りたい場合は市区町村の介護保険課に相談するとよいでしょう。

介護保険の負担割合はいつ決まる?

介護保険の負担割合は毎年7月に決定され、市区町村から7月中旬~下旬ごろに「介護保険負担割合証」が送られてきます。

介護保険負担割合証の見方や、負担割合が変更されるケースについて紹介します。

介護保険負担割合証の見方

 

利用者負担割合は毎年の所得によって変わるため、介護保険負担割合証も毎年更新されます。

割合証には、住所・氏名・生年月日のほか、割合証の有効期限や本人の自己負担割合が記載されています。

届いたら、住所や氏名が間違っていないか確認しておきましょう。

有効期限は原則8月1日から翌年7月31日となっていますが、世帯構成の変更や所得の更正によっては年度途中で変更になる場合もあります。

負担割合が変更される場合

 

負担割合は、世帯における65歳以上の人数によっても異なるため、世帯内の高齢者の死亡や転出、転入があると、負担割合が変更される場合があります。

この際の変更は、死亡や転入出のあった月の翌月(1日の場合は当月)からです。

年度の途中で65歳になり、負担割合が変更される場合も同様に、誕生月の翌月分(1日の場合は当月分)から負担割合が変更されます。

ただし、所得の更正によって負担割合が変更になった場合は、8月まで遡って再計算されるため、注意が必要です。

夫婦で負担割合が異なる?

 

負担割合の計算は個人で行うため、同じ世帯に属する夫婦間でも負担割合は同じではありません。

特に、厚生年金による所得の多い夫側の負担割合が妻側よりも高くなる傾向があります。

負担割合証を紛失した場合の再交付手続き

 

負担割合証は介護保険証とともに、介護サービスの契約時に必要になります。

万が一、紛失や破損などがあれば、再交付の手続きを行わなければなりません。

「再交付申請書」を市区町村の窓口で受け取るか、ダウンロードをして、必要事項を記入したのち提出します。

再交付は、個人情報保護の観点から郵送では受け付けていない自治体が多く、基本的には本人または成年後見人による受け取りが必要です。

居宅サービスの各負担割合における自己負担額

ここまで負担割合について解説してきましたが、実際の自己負担額がいくらになるのか、居宅サービスの例を取り上げ、支給の限度額や個々のサービスごとにおける1~3割の負担割合を解説します。

居宅サービスとは

 

介護を必要とする在宅の高齢者に対して提供する介護サービスが「居宅サービス」です。

具体的には、訪問介護や訪問看護、訪問入浴、デイサービスなどが該当します。

短期入所生活介護(ショートステイ)も、利用後は自宅に戻るため、居宅サービスの一部です。

居宅サービスの区分支給限度額

 

居宅サービスは、限りある介護サービスが万人に広く提供できるように、介護度ごとの区分支給限度額が定められています。

そのため介護サービスは、誰でも好きなだけ受けられるというものではありません。

ケアマネジャーは、限度額の範囲内で利用者にとって最適なサービスをご利用者本人やそのご家族と相談しながら取捨選択し、ケアプランを作成します。

限度額は単位で表され、地域や介護サービスの種類によって1単位あたりの単価に違いが生じます。

通常は1単位につき10円ですが、東京は1級地とされており、1単位10.9~11.4円ともっとも高い設定です。

介護サービスの事業所は、提供したサービスの点数に応じて介護報酬を受け取ります。

居宅サービスの1カ月あたりの区分支給限度額と負担額(1単位10円で計算)

 

利用限度額自己負担割合

1割の場合

自己負担割合

2割の場合

自己負担割合

3割の場合

要支援150,320円5,032円10,064円15,096円
要支援2105,310円10,531円21,062円31,593円
要介護1167,650円16,765円33,530円50,295円
要介護2197,050円19,705円39,410円59,115円
要介護3270,480円27,048円54,096円81,144円
要介護4309,380円30,938円61,876円92,814円
要介護5362,170円36,217円72,434円108,651円

 

参照:厚生労働省「サービスにかかる利用料

区分支給限度額を超えるとどうなる?

 

もしも区分支給限度額を超えてしまった場合、超えた分の全額は利用者の負担となり、介護保険制度による介護報酬の支払いはされません。

ただ、サービスを利用できないわけではなく、経済的に余裕のある世帯では全額を負担しても利用を希望するケースがまれにあります。

居宅サービスごとの時間別負担額

 

居宅サービスに必要な単位数は、サービス内容、要介護度、サービスが提供される時間によって異なります。

ここでは代表的な居宅サービスについて、条件別の負担額を紹介します。

ただ、実際には同じサービスでも各種加算や減算、事業所の規模、人員配置などによって利用者負担は変化することにも留意しておきましょう。

サービス内容や事業所によっては、介護保険対象外の費用が発生することもあります。

 

【訪問介護】

訪問介護とは、介護を必要とする高齢者の自宅にヘルパーが訪問し、食事や排泄、入浴の介助や、掃除、洗濯、調理といった家事を行うことです。

通院や買い物の付き添いも訪問介護に含まれます。

訪問介護における自己負担額(自己負担割合1割の場合)

 

サービス内容サービス時間必要単位(1回)自己負担額
身体介護20分未満163163円
20~30分244244円
30~60分387387円
60~90分567567円
生活援助20~45分179179円
45分以上220220円

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

【訪問看護】

訪問看護は、高齢者の自宅に看護師が訪問し、医師の指示に基づいて医療処置や療養上のアドバイスを行います。

具体的な業務としては、健康チェックや傷の処置、点滴、ストーマの管理などの医療行為です。

訪問看護における1回あたりの自己負担額(負担割合1割の場合)

 

サービス時間指定訪問看護ステーション病院・診療所による訪問看護
単位自己負担額単位自己負担額
20分未満314314円266266円
30分未満471471円399399円
30~60分823823円574574円
60~90分11281128円844844円

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

【デイサービス(通所介護)】

デイサービスは、自宅に住む高齢者が集まり、食事や入浴のサービスを利用しながら、機能訓練やレクリエーションを受けられる施設です。

職員による送迎も行われているため、移動が困難な方でも利用できます。

デイサービスにおける1回あたりの単位(通常規模のデイサービス)

 

サービス時間指定訪問看護ステーション病院・診療所による訪問看護
単位自己負担額単位自己負担額
20分未満313313円265265円
30分未満470470円398398円
30~60分821821円573573円
60~90分11251125円842842円

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

【短期入所生活介護(ショートステイ)】

短期入所生活介護は、特別養護老人ホームなどに一定期間宿泊し、食事や排泄、入浴などのサービスや、生活機能訓練を受けられるものです。

普段介助を行っている家族が用事や病気といった理由で一時的に介護ができない時や、介護疲れの軽減のためのレスパイトケアの目的で利用されます。

ショートステイは、部屋のタイプによって、単位が変わります。

短期入所生活介護の単位数(1日あたりの単位)

 

単独型短期入所生活介護費併設型短期入所生活介護費
要介護度従来型個室・多床室ユニット型個室従来型個室・多床室ユニット型個室
要介護1645746603704
要介護2715815672772
要介護3787891745847
要介護4856959815918
要介護59261028884987

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

特定福祉用具購入費の上限額

 

要介護認定を受けていれば、一部の福祉用具の購入に介護保険が利用できます。

多くの福祉用具はレンタルが可能ですが、直接肌に触れる腰掛便座や入浴補助用具、移動用リフトのつり具部分などはレンタルに適さないため、購入が必要です。

これらを購入する際、いったん10割負担で全額を支払った後、個別の負担割合に応じて7~9割にあたる金額が償還払いされます。

ただし、償還払いになる金額は1年間に10万円分までの購入が上限で、超える金額に関しては自己負担になります。

住宅改修費の上限額

 

自宅のバリアフリー化や手すりの取り付け、洋式トイレへの変更などにかかる費用についても、介護保険適用の範囲です。

事前申請が必要ですが、いったん全額を支払った後、負担割合に応じて7~9割の金額が償還払いとなります。

償還払いされる上限は20万円分までの改修で、上限額を越えての利用はできませんが、引っ越しなどで住居が変わった場合や、要介護度が一度に3段階以上上昇した場合は再度利用が可能です。

地域密着型サービスの区分支給額

 

地域密着型サービスとは、要介護の状態になっても住み慣れた地域での生活が可能になることを目的に、市町村に指定された事業者によって提供されるサービスです。

具体的には、定期巡回や小規模多機能型居宅介護などがあてはまります。

事業規模は小さいものの、地域の利用者のニーズに対して柔軟な対応が可能です。

 

【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】

定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、介護士や看護師が連携し、24時間対応で地域の利用者宅を定期的に訪問して回るサービスです。

一般的な訪問介護と異なり、1回の訪問時間は数分から1時間以上と幅が広く、1日の訪問回数にも制限がありません。

服薬だけや巡視だけといったピンポイントなサービスの提供が可能です。

また、通報システムにより利用者からの通報を受けたオペレーターが、利用者の状況に応じたサービスを手配し、必要な時だけ介護を依頼することもできます。

利用料は月額制で、看護師が常駐しているかどうか、看護サービスを受けるかどうかによって料金が変わる仕組みです。

指定定期巡回型・随時対応型訪問介護看護の負担額(1割負担の目安)

 

看護師がいない事業所

または訪問看護を行わない場合

看護師がいる事業所で

訪問看護を行う場合

要介護15,446円7,946円
要介護29,720円12,413円
要介護316,140円18,948円
要介護420,417円23,358円
要介護524,692円28,298円

参照:厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」

 

【小規模多機能型居宅介護】

小規模多機能型居宅介護は、訪問、通所、宿泊といった3つのサービスを複合的に提供します。

これによって、きめ細やかで自由度の高いサービスの提供が可能です。

料金は月額制に食費や宿泊費、おむつ代などが利用した分だけ追加される形となります。

小規模多機能型居宅介護の費用(1カ月単位)

 

要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
10,458円15,370円22,359円24,677円27,209円

参照:厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」

施設サービスの自己負担額

介護保険制度における施設サービスとは、施設に入所して受けるサービスを指し、食事や入浴、排泄、機能訓練といったサービス全般を受けることができます。

自己負担額に加えて食費や住居費などが必要です。

特別養護老人ホーム

 

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の高齢者を対象とした介護保険施設です。

食事や排泄、入浴などの介助や、機能訓練なども受けることができます。

介護サービスにかかる費用は、施設や部屋のタイプによって異なるため、入所時に確認しておくことが大切です。

介護保険による特別養護老人ホーム1日あたりの単位(基本部分)

 

従来型個室・多床室ユニット型個室
要介護1589670
要介護2659740
要介護3732815
要介護4802886
要介護5871955

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

特定施設

 

介護保険施設以外にも、特定施設の指定を受けた施設は「特定施設入居者生活介護」として介護保険が利用可能です。

特定施設には、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームが含まれます。

介護保険の利用者負担とは別に、食費や住居費などの費用がかかり、高額になる場合もあるため注意が必要です。

特定施設入居者生活介護1日あたりの単位(基本部分)

 

要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
単位183313542609679744813

参照:厚生労働省「介護報酬の算定構造

介護費用の自己負担額を軽減できる方法

介護費用は1割負担であっても、介護度が高いと費用が高額になる場合もあります。

しかし、介護費用負担には所得による上限措置などの軽減制度があり、上手に活用することで費用を抑えることが可能です。

負担軽減制度をいくつかご紹介します。

高額介護サービス費制度

 

1カ月あたりの介護費用が高額になる場合、所得に応じた上限額が設定されており、申請によって「高額介護サービス費」として上限を超えた金額が償還払いされます。

もし同一世帯に介護サービス利用者が複数いる場合、合算した金額に対して上限が適用されます。

高額医療・高額介護合算制度

 

医療費と介護費を合算した費用が一定の額を超えた場合、申請することで超過分が支給される制度です。

毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、医療費と介護費を合算した金額が所得に応じた上限額を超えている場合、市区町村から通知が届き、通知に従って申請をすることで費用負担を軽減できます。

負担限度額認定制度による特定入所者介護サービス費

 

施設サービスの場合、介護サービス費だけでなく食費や住居費といった施設利用料も大きな負担です。

本人を含めて世帯全員が住民税非課税であり、預貯金が基準額以下である場合は、負担限度額認定制度によって食費や住居費に対しても上限額が設定され、超過分は介護保険から現物給付されます。

対象者は、申請することで「負担限度額認定証」が交付されます。認定の適用期間は毎年8月1日から翌年7月31日となっており、毎年の申請が必要です。

年度途中で非課税世帯になった場合でも、申請すれば申請月の初日に遡って適用されます。

特定入所者介護サービス費における負担限度額認定の条件

 

利用者負担段階条件食費の自己負担額

(1日あたり)

第1段階世帯全員が住民税非課税で、

老齢福祉年金の受給者及び生活保護受給者

300円
第2段階世帯全員が住民税非課税で、

年金収入などが年間80万円以下

390円
第3段階(1)世帯全員が住民税非課税で、

年金収入などが年間80万円以上120万円未満

650円
第3段階(2)世帯全員が住民税非課税で、

年金収入などが年間120万円以上

1,360円
第4段階上記に該当しない

 

参照:厚生労働省

介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります

世帯分離

 

介護を必要とする本人とその家族との世帯を分離することで、介護にかかる費用の軽減につながる場合があります。

負担割合は「本人の所得」または「世帯の所得」によって決められるため、世帯を分けることで、本人の所属する世帯の所得を減らし、負担割合の低減や高額介護サービス費制度などにおける上限額を抑えることが可能です。

介護費用以外でも国民健康保険の保険料を抑えたり、医療費の自己負担割合を低くしたりすることができます。

ただし、手続きが煩雑であることや、扶養から外れると勤務先の健康保険に扶養として加入できなくなる、扶養手当や控除が使えなくなるなどのデメリットもあるため、よく考えてから行うようにしましょう。

まとめ

介護保険の負担割合は、所得や年齢に応じて1~3割に設定されていますが、制度の仕組みを理解することで、どれくらいの費用負担になるか目安がつきやすくなります。

また、軽減制度を上手に活用することで、介護費用の心配を軽くし、一人ひとりに適したサービスを受けられることになるでしょう。

高齢期を安心して過ごせるように、今後の制度変更にもしっかり注意が必要です。