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ホスピスとは何をするところ?緩和ケアとの違いや施設別の費用を詳しく解説

ホスピスとは何をするところ?緩和ケアとの違いや施設別の費用を詳しく解説

ホスピスとは、病気に伴う苦痛を和らげ、最期までその人らしい時間を過ごすための施設です。

ホスピスを提案された方の中には、「実際には何をする場所なの?」「緩和ケアとの違いや費用は?」と悩む方も多いでしょう。

本記事では、ホスピスの役割や緩和ケアとの違い、提供している施設の種類、かかる費用を詳しく解説します。

大切な人の最後に、その人らしい選択ができるように、ぜひ最後までご覧ください。

ホスピスとは?

ホスピスとは、病気の進行により治療の継続が難しい方に対し、痛みや不安などの苦しみを和らげ、心穏やかに最期の時間を過ごせるよう支援する施設です。

医師や看護師だけでなく、ソーシャルワーカー、介護スタッフなど多職種がチームとなり、患者さんとご家族の両方をサポートします。

ここでは、ホスピスの特徴や歴史、緩和ケアやターミナルケアとの違いについて詳しく解説していきます。

患者さんの最後の時間をサポートする施設

 

冒頭でも紹介したとおり、ホスピスは病気の進行により治療の継続が難しい患者さんの最後の時間を、その方らしく過ごせるように支援する施設です。

病気そのものを治すことを目的としていないため、基本的には治療や延命は行われず、患者さんのQOL(生活の質)に重点を置いたケアが行われるところが特徴です。

医師や看護師、ソーシャルワーカー、介護スタッフなどが病気による患者さんの痛みを緩和するとともに、心理的サポートも実施されます。

一昔前であれば、病院を中心に行われていましたが、現在では介護施設や自宅でも受けられるようになってきています。

ホスピスの歴史

 

ホスピスは、1967年にイギリス人のシシリー・ソンダースの提唱により始まったとされています。

それまでの医療の考えは、「検査・診断・治療・延命」の4つの柱が基準となっていました。

しかし、治療の難しい患者さんの場合、その病気から引き起こされる痛みや不安に対して、十分に対応するには限界がありました。

そこで、苦痛を和らげながら心のケアにも重点を置く「ホスピス」と呼ばれる新しい医療の形が誕生したとされています。

緩和ケアとの違い

 

ホスピスと緩和ケアは、どちらも受けられるケアはほとんど同じですが、目的・対象者・始める時期が異なります。

緩和ケアは、ほとんどのケースで末期がんの患者が対象であり、鎮痛剤による痛みの緩和が行われます。

病気の進行度は関係なく、治療が必要と判断されたタイミングでケアが始まります。

一方、ホスピスは治療が難しいと判断された患者さんに対して、痛みの緩和や心のケアを行い、その方らしい最後を支援することを目的としています。

対象疾患は限定されているため、積極的な治療の継続が難しいとされた時点でケアが始まるのが特徴です。

ターミナルケアとの違い

 

ターミナルケアとホスピスの違いは、対象疾患や年齢層が異なります。

ターミナルケアとは、直訳すると「終末期医療」を意味し、病気や老化によって残された余生をその方らしく過ごすことを目的としています。

対象疾患が定められておらず、認知症や老衰といった主に高齢者が対象となるところが特徴です。

一方、ホスピスはがんやエイズを患った方が対象となり、年齢層も若年層から高齢者など、幅広くなっています。

看取りケアとの違い

 

ホスピスと看取りケアの違いは、期間が異なります。

看取りケアは、死を迎える直前の方に対してケアが行われるのが特徴です。

死の直前にある方に対して、身体的・精神的な苦痛をできるだけ取り除き、最後のときまでその方らしい生活ができるよう支援することが目的です。

一方、ホスピスは、病気の進行により治療の継続が難しい場合に行われるため、治療の効果が見込めないと判断されたときからケアが始まります。

なお、一つ前に紹介したターミナルケアとでは、ターミナルケアは病院、看取りケアは介護施設で提供されるといった場所に違いがあります。

病院との違い

 

ホスピスと病院とでは、目的が大きく異なります。

病院は病気そのものを改善することが特徴で、病気の治療を目的としています。

一方、ホスピスは、病気に対する痛みや精神的な負担をできるだけ和らげることが目的で、積極的な治療は行われません。

なお、病院によっては、ホスピスを実施しているところもあります。

高齢者施設でもホスピスケアが増加している

 

歴史の項目で紹介したように、ホスピスの基本的な考えは医療現場から誕生しており、病院で行われるケースがほとんどでした。

しかし、近年では病院以外にも高齢者施設や自宅などで最後の時間を迎える方が増えてきています。

そのため、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでも取り入れられるようになってきました。

このことから、最後の時間を過ごす場所が病院だけではなく、施設や自宅といった選択肢も広がっています。

子どもが利用できる子どもホスピスもある

 

ホスピスは若年層から高齢者といった幅広い方が受けられるケアですが、その中には子どもが受けられるホスピスも存在します。

子どもホスピスとも呼ばれ、主に小児がんや難病をお持ちのお子さんを一時的に預け、ご家族に休息の時間をとってもらうことを目的としている点が特徴です。

例えば、たんの吸引や人工呼吸器が付いているお子さんを自宅でケアする場合、24時間気を張り続けなければなりません。

そのようなご家族のために、一時的にお預かりし、普段できないお買い物や兄弟姉妹のケアなどを行ってもらえるよう支援しています。

ホスピスを実施している施設の種類

ホスピスは病院での提供以外にも、老人ホームや在宅などでも行われています。

また、それぞれ行われているケア内容が異なり、対象者なども違ってきます。

ここでは、ホスピスを実施している施設の種類や対象者を詳しく見ていきましょう。

病院内の緩和ケア病棟

 

病院におけるホスピスケアは、緩和ケア病棟で実施されます。

主に医師や看護師を中心に、薬剤師、ソーシャルワーカーなどから医療的ケアを受けられるのが特徴です。

もともと病院で治療を目的としたケアを受けていた方が、治療が難しくなった理由で、緩和ケア病棟に移ることも少なくありません。

終末期ケアに対応する老人ホーム

 

ホスピスがサービス内容に含まれている老人ホームでも、ケアが受けられる施設があります。

老人ホームの場合は、終末期ケア(ターミナルケア)であることがほとんどで、終の住処として利用されます。

ただし、施設の種類によって「要介護と判断されている」などの条件を満たす必要があるため注意が必要です。

緩和ケアを行うサービス付き高齢者向け住宅

 

サービス付き高齢者向け住宅ではさまざまなプランが用意されており、その中にホスピスケアが含まれていれば、自分に必要なケアが受けられます。

ただし、老人ホームと同様に要介護認定や60歳以上などの条件を満たす必要があるため、注意しましょう。

在宅での緩和ケアサービス

 

近年では、在宅で受けられるホスピスケアも増えてきています。

「人生の最後は住み慣れた自宅で過ごしたい」「できれば家族と一緒にいたい」といった方にとって自宅での緩和ケアは大切な選択肢です。

医師や看護師による訪問診療・訪問看護が行われ、緊急時にも対応してくれるので安心して任せられます。

ホスピスを利用できる対象者

ホスピスを利用できる対象者は、基本的に「病気に伴う痛みを抑え、穏やかで自分らしい時間を過ごしたい」と希望するすべての方が対象となります。

しかし、提供する場所によって利用できる条件は少し異なります。

以下は、病院と介護施設における対象者です。

 

病院介護施設
・治療が難しい病気を患っている

・主治医から現在の病状や今後の経過について説明を受けている

・主治医により緩和ケアが必要と判断されている

・入院を本人が希望している

・厚生労働大臣が定める疾病と診断されている

・人工呼吸器などを使用しており、医療的ケアへの依存度が高い

・主治医から現在の病状や今後の経過について説明を受けている

・介護施設を本人が希望している

 

どちらも治療が難しい病気が含まれ、加えて病状や今後の経過について説明を受けている人などが対象者となります。

また、本人がどちらを希望するかも考慮されます。

ホスピスで働く職員

ホスピスで働く職員は場所によって異なりますが、主に以下の職種の方が働いています。

 

  • 医師
  • 看護師
  • 薬剤師
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護職員
  • ソーシャルワーカー(社会福祉士など)
  • 医療ソーシャルワーカー(MSW)
  • 作業療法士
  • 理学療法士
  • 栄養士
  • カウンセラー

 

病院では医師や看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなどからのケアが中心となるため、病気に伴う痛みの緩和や治療や薬の調整ができるところが特徴です。

一方、介護施設では介護職員や介護支援専門員、ソーシャルワーカーなどからケアを受けられるため、日常生活の援助や支援なども行われます。

ホスピスで実施されているケア内容

ホスピスで実施されているケアの内容は、主に4つに分けられます。

以下に詳しく紹介していきます。

身体的ケア

 

身体的ケアは、病気による痛みの緩和はもちろん、食事や入浴、更衣といったケアも含まれます。

具体的には、以下が挙げられます。

 

  • 痛みが緩和できる投薬や外的処置
  • 酸素吸入
  • 点滴
  • 食事・入浴・更衣・排泄・清拭などの介助
  • マッサージ

 

ホスピスは痛みの緩和のために投薬や外的処置が行われるため、治療目的のケアは行われません。

精神的ケア

 

精神的ケアは、死に向かう不安や孤独を軽くするために行われるケアです。

具体的には、以下が挙げられます。

 

  • カウンセラーによるカウンセリング、メンタルケア
  • レクリエーション
  • 季節のイベント

 

このような支援を通して、患者さんだけでなくご家族も含めた日常生活の充実感や楽しみを感じられるよう工夫されています。

社会的ケア

 

社会的ケアは、経済的な問題や自分が亡くなった後の相続問題といった悩みを解消するために行われるケアです。

具体的には、以下が挙げられます。

 

  • 相続や財産分与の手助け
  • 手続きに関する代行
  • ご家庭における相談
  • 介護や看護サービスの手配

 

ホスピスを受ける方は、身体的・精神的な負担以外にも、経済的な不安や手続きの負担で悩むことも少なくありません。

これらの悩みを解消することで、その方らしい最後を迎えることにもつながります。

個人に寄り添ったケア

 

ホスピスでケアを受ける方の思いや希望は一人ひとり異なります。

例えば、「最後は好きな料理を味わいたい」「1日だけでも自宅に帰りたい」「若い頃からの友人にもう一度会いたい」といった願いを持つ方も少なくありません。

このような患者さんの希望に寄り添い、実現をサポートしている施設もあります。

医療的なケアだけでなく、人生の最期をその人らしく過ごせるよう支えることも大切な役割です。

ただし、どこまで対応できるかは施設によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

ホスピスを利用する際にかかる費用

ホスピスを利用する際にかかる費用は、どこでケアを受けるかによって異なってきます。

病院であれば医療保険が適用される場合があり、自己負担額が抑えられます。

一方、高齢者施設では介護保険の対象となり、生活費や居住費が加わる点が特徴です。

ここでは「病院内の緩和ケア病棟」と「高齢者施設」のそれぞれの費用目安を詳しく見ていきましょう。

病院内の緩和ケア病棟の場合

 

病院内の緩和ケア病棟を利用する場合の費用目安は、入院料1と入院料2のどちらが適用されるかによって異なります。

具体的には、以下のとおりです。

 

入院料1の場合入院料2の場合
30日以内51,350円48,970円
31日以上60日以内45,820円44,270円
61日以上33,730円33,210円

 

※参考:厚生労働省「令和6年度調査結果(速報)概要(p.100)

※入院料1点あたり10円で換算

 

緩和ケア病棟が設けられている病院では医療保険が利用できるため実際には上記の料金の1~3割となります。

また、高額療養費制度も適用できますので、うまく利用すれば費用を抑えられます。

高齢者施設の場合

 

高齢者施設を利用する場合、かかる費用は施設の種類によって大きく異なり、入所費用の目安は月額3~30万円程度です。

さらに、入所時に一時金や敷金が必要となる施設もあり、食事代や日常生活にかかる費用、医療ケアを受ける際の費用が別途加算されるケースもあります。

また、高齢者施設でホスピスを利用する際には介護保険が適用されます。

介護保険の自己負担額は、要介護認定で判定された区分や所得状況によって変わるため、事前に確認しておくことが重要です。

ホスピスを実施している施設の探し方や利用までの流れ

ホスピスを利用したいと思っても、どの施設で受けられるのか、どうやって利用を始めればいいのかが分からず不安に感じる方は少なくありません。

ここでは、ホスピスを実施している施設の探し方と、実際に利用を開始するまでの流れについて分かりやすく解説します。

ホスピスを実施している施設の探し方

 

ホスピスが必要になった際の施設の探し方は、利用する場所によって異なります。

具体的には、以下のとおりです。

 

場所相談先
病院主治医

がん相談支援センター

高齢者施設地域包括支援センター

ケアマネジャー

在宅ケアマネジャー

在宅医療介護連携支援室

 

ホスピスの対象者が治療が困難と判断された方であることから、最初に主治医に相談する場合が多いと思います。

しかし、利用する場所によって相談先が異なるため、ケアを受けたいところが決まってから再度相談しましょう。

ホスピスを利用するまでの流れ

 

ホスピスを利用するまでの基本的な流れは次のとおりです。

 

  1. 主治医やソーシャルワーカー、ケアマネジャーに相談
  2. 病院や施設の情報収集
  3. どのホスピスを受けるか選択
  4. 申し込み・面談・審査
  5. 入院・入所

 

どのホスピスを利用するかによって少し流れが異なり、病院の場合は主に主治医やソーシャルワーカーと相談し、高齢者施設の場合は主治医とケアマネと相談します。

その後、利用したい施設や病院を紹介してもらい、申し込み・面談を行い、受け入れが決定すれば利用開始となります。

ホスピスを利用するタイミングや利用期間

ホスピスを利用する正確なタイミングは決まっておらず、利用条件を満たすとともに、本人やご家族が望めば利用可能です。

利用期間に関しては、30~45日程度と短い期間となっています。

その理由は、病床数の少なさや入院料の高さから長期的な利用が難しいことが原因となっています。

そのため、在宅ホスピスに切り替える方や、できるだけ安く済む介護施設に移る方も多いようです。

退院して自宅ケアに移ることも可能

 

一つ前で紹介したように、ホスピスは入院・入所しても、本人やご家族が望めば退院もできます。

特に病院内の緩和ケア病棟の場合は、長期療養を目的とした入院はできないと決まっているため、多くの方は1カ月ほどで在宅ホスピスへ移られます。

また、在宅に移っても緊急時の対応や在宅往診ができる体制が整っているため、病状が急に変化しても適切な医療を受けられるので安心できます。

ホスピスを病院・施設で受けるか、自宅で受けるか迷ったら

ホスピスは病院や介護施設で受ける方法と、自宅で受ける方法があります。

どちらにもよい点と注意すべき点があり、どちらが正解というものはありません。

以下にそれぞれのメリット・デメリットを紹介しますので、選ぶ際の参考にしてください。

病院や施設でホスピスを受けるメリット・デメリット

病院や施設でホスピスを受けるメリット・デメリットは次のとおりです。

 

メリットデメリット
  • 医師や看護師、介護スタッフなどが常駐している
  • ご家族の介護負担を軽減できる
  • 費用がかかる
  • ご家族の付き添いに制限がある

在宅でホスピスを受けるメリット・デメリット

 

在宅でホスピスを受けるメリット・デメリットは、次のとおりです。

 

メリットデメリット
  • 住み慣れた環境で過ごせる
  • ご家族が面会に行かなくて済む
  • 緊急時にすぐに対応できない
  • ご家族の介護負担が増える

最終的な決定はご本人に任せる

 

ここまで、病院や施設、そして在宅のメリット・デメリットを紹介しましたが、最終的な決定はご本人に任せることが大切です。

ホスピスを利用される方は、自分の最後をどこで過ごすのかを選択することになるため、その決断は人生の最終章において大きな意味を持つでしょう。

そのため、ご家族や支援する方は、できる限りご本人の希望に寄り添うことが重要です。

ただし、ご本人が迷っている場合には、医師や看護師、ソーシャルワーカーなどの専門職に相談しながら一緒に考えることもできます。

「本人の意思を尊重する」ことを前提に、安心して過ごせる環境を整えていくことが、ホスピスを選ぶ上で何より大切なポイントです。

まとめ

本記事では、ホスピスとは何かを紹介し、緩和ケアやターミナルケアとの違いについて、利用する際にかかる費用などを紹介してきました。

ホスピスは、病気の治療が難しい状況にある方が、苦痛を和らげながら自分らしい時間を過ごすための大切な選択肢です。

病院や施設、自宅といったさまざまな場所で受けられ、それぞれに特徴や費用の違いがあります。

利用を検討する際は、ご本人の希望を最優先に、ご家族や医療スタッフとよく相談しながら環境を選ぶことが大切です。

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