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ヒヤリハットの正しい書き方は?事例別の例文を紹介

ヒヤリハットの正しい書き方は?事例別の例文を紹介

介護の現場におけるヒヤリハットとは、重大な事故になっていた可能性がある状況や出来事のことです。

ヒヤリハットが起こった場合は、報告書の作成と提出が推奨されますが、どのように書けばいいのでしょうか。

この記事では、ヒヤリハット報告書の正しい書き方について解説しています。

ヒヤリハット報告書を書くときのポイントや、ヒヤリハットのよくある事例、再発を防止する方法についても解説しているので、介護の現場で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

ヒヤリハットに関する基礎知識

 

ヒヤリハットはなぜ、報告することが推奨されているのでしょうか。

介護の現場における、ヒヤリハットの意味や目的について解説します。

ヒヤリハットとは

そもそもヒヤリハットという言葉は、危険な状況に遭遇した際の「ヒヤリ」と、驚いたときの「ハッと」を組み合わせた造語です。

介護だけではなく、製造業や医療、建設業など、あらゆる業種で発生する可能性があります。

介護の現場におけるヒヤリハットとは、一歩間違えれば骨折や誤嚥など、利用者の命に関わる重大な事故が発生していたかもしれない事例のことです。

小さな見落としや不注意は、大きな事故につながる可能性があります。

アメリカの損害保険会社に勤めていた安全技師のハインリッヒは、労働災害におけるケガの程度や比率を「ハインリッヒの法則」として発表しました。

1件の重大事故の裏には、29件の軽微な事故と300件にも及ぶヒヤリハットが存在しています。

つまり重大事故の予兆となるヒヤリハットを報告して安全対策を徹底すれば、重大な事故を未然に防げる可能性があるということです。

インシデントとの違い

 

ヒヤリハットと似た言葉として、インシデントやアクシデントがあります。

インシデントとは、事故が発生したものの、被害が軽かったりそこまで重大ではなかったりする事象のことを指す言葉です。

介護の現場では、服薬ミスや転倒、転落、異食など、介護時に軽度の外傷が発生した際に使用します。

ヒヤリハットとの違いは、実際に事故が起きていることです。

転倒しそうになった場合はヒヤリハット、転倒した場合はインシデントに分類されます。

大きな被害がなかった場合でも、インシデントに分類された事象に関しては、迅速な対策の実施が必要です。

アクシデントとの違い

 

介護の現場におけるインシデントの中で、重大な損害が発生した事象のことをアクシデントと呼びます。

例えば軽症の場合はインシデントですが、不可抗力の事故により、利用者が骨折した場合はアクシデントです。

アクシデントが発生すると、利用者だけでなく、家族とのトラブルを招くおそれがあります。

前提として重大事故を起こさないために、ヒヤリハットやインシデントの報告が必要です。

事故を防ぐために報告書を作成する

 

重大事故を防ぐためには、ヒヤリハットの報告が必要不可欠です。

ヒヤリハットが発生した場合は、報告書を作成し、担当者に提出します。

集まったヒヤリハットを分析して、適切な対策をとれば、インシデントやアクシデントの発生を防げるでしょう。

また、ヒヤリハット報告書の作成は、事故が発生したときに適切な対応を実施してきた上で発生したことの証明になります。

報告書による証拠の積み重ねにより、事業所とスタッフを守ることが可能です。

ヒヤリハットの基本的な書き方

 

報告書に記載する基本項目は、次のとおりです。

 

  • 発生場所と日時
  • 対象者
  • 状況経過
  • 発生する可能性があった事故
  • 今後の対策

 

ヒヤリハット報告書の書き方を、項目ごとに解説します。

発生場所と日時

 

まずは、いつどこでヒヤリハットが発生したのかを記載します。

事象の発生場所と日にち、時間を正確に記載してください。

同じ場所や時間帯に、同じような事故が起きていないか、分析するために必要な情報です。

例:令和8年1月20日(火)午後0時30分 食堂

対象者

 

ヒヤリハットに関わった利用者と、職員、目撃者の名前を記載します。

役職や所属も忘れずに記入してください。

イニシャルにすると第三者が読んだときに理解しにくいため、対象者の名前はすべて実名で記載するのが望ましいでしょう。

例:介護職員:大葉和子 利用者:小林博様

状況経過

 

どのような介助をしているときに、何が起きたのか、どのような結果になったのかを記載します。

難しく考えすぎず、簡潔に書いてください。

結果や被害の有無も記載します。

例:食事の介助中に義歯が外れてしまったが、飲み込むことはなかった。

発生する可能性があった事故

 

ヒヤリハットの事象により、どのような事故が発生する可能性があったか、どのように未然に防ぐことができたかを記載してください。

事象を振り返ることで、ヒヤリハットの要因を分析できます。

例:義歯を飲み込んでしまうリスクや、義歯が喉に詰まる可能性があった。事前に義歯の状態を確認していなかった。

今後の対策

 

同じような事象を発生させないために、施設や自身ができる対策を記載します。

注意する、といった抽象的な対策ではなく、具体的な行動を明記してください。

例:食事を提供する前に義歯の状態をチェックする。歯科受診や定期検診の必要性を他職種と連携して検討する。

ヒヤリハット報告書を書くときのコツ

 

ヒヤリハットはどのようにまとめるのが正解なのでしょうか。

ヒヤリハット報告書の書き方のコツを紹介します。

5W1Hを意識する

 

ヒヤリハット報告書は、次の5W1Hを意識しながら書くと、必要な情報が漏れなく整理できます。

 

  • When:いつ(発生日時)
  • Where:どこで(発生場所)
  • Who:誰が(関係者)
  • What:何をしたか(出来事)
  • Why:なぜ起きたのか(原因)
  • How:どのように対応するか(対処法)

 

ヒヤリハット報告書を読むのは、職員や管理者だけではありません。

場合によっては、利用者の家族が読むこともあります。

読み手が理解しやすい文章で書くことを心がけましょう。

客観的な事実を記載する

 

ヒヤリハット報告書に記載するのは、客観的な事実に基づいた情報だけにしてください。

責任追及や謝罪のための報告書ではないので、私情や推測を書く必要はありません。

「焦っていた」「注意していたつもりだった」などの主観的な意見を書いてしまうと、原因が分かりにくくなってしまいます。

発生時の細かい状況について、あいまいだったり忘れてしまったりする部分は記載しなくてOKです。

自分が目撃した事実だけを、明確に記載しましょう。

直接的な原因と間接的な原因を考察する

 

なぜ起きたのかを記載する項目では、ヒヤリハットが発生した直接的な原因と、間接的な原因を考えてください。

ヒヤリハットが起こるのは、かかわった本人やスタッフだけに原因があるのではなく、介助方法や施設環境・設備にも問題がある可能性があるからです。

ヒヤリハットの再発を防止するために、さまざまな角度から原因を考察し、それぞれに合った対策を考えることが重要になります。

具体的な再発防止策や改善策を考える

 

原因分析だけでなく、具体的な再発防止策や改善策を考えることが重要です。

介助のやり方に問題があった場合は、より安全な手順や方法を考えて周知する必要があります。

また、起こり得た最悪のケースについても記載しましょう。

重大な事故が起こらなくてよかったと、安心するための報告書ではありません。

事故が起こったことを想定することが、周囲への注意喚起になります。

箇条書きや短文を用いる

 

報告書の文章は、長々と書くのではなく、箇条書きや短文で記載することを心がけましょう。

長文で書いてしまうと理解するまで時間がかかり、重要なポイントが伝わりにくくなってしまいます。

難しく考えずに、要点のみを整理して簡潔に書くことが大切です。

ヒヤリハット報告書を書くときの注意点

 

報告書を適当に作成してしまうと、事故を予防することができません。

ヒヤリハット報告書を書くときの注意点について解説します。

専門用語を多用しない

 

ヒヤリハット報告書は関係者だけでなく、家族などの第三者にも開示する場合があります。

そのため、職員にしか理解できない隠語や略語は使用しないでください。

専門用語を多用してしまうと、何があったのか分かりにくい報告書になってしまいます。

誰が読んでも分かりやすい文章を心がけましょう。

できるだけ早く作成する

 

記録を正確に残すために、ヒヤリハットが発生した後はできるだけ早く報告書を作成してください。

記憶は時間の経過とともにあいまいになっていきます。

記載内容が正確でないと、適切な改善策を実施することができません。

忘れてしまいそうなときは、メモを残しておくことも有効な手段です。

ヒヤリハットに遭遇した記憶が残っているうちに、報告書を作成しましょう。

事実を隠蔽しない

 

ヒヤリハットがあった事実を隠蔽するのはやめてください。

重大な事故を防ぐためには、ヒヤリハットの段階で対策を講じる必要があります。

ヒヤリハットの報告基準は、実際に事故が起きたかどうかではなく、事故を未然に防ぐことができたかどうかです。

類似のケースを繰り返していくうちに、重大な事故に発展します。

ヒヤリハットを体験しても、誰かから責められたり処分が下されたりすることはありません。

利用者の安全と健康を守るために、ヒヤリハット報告は欠かさず行いましょう。

介護の現場で起こりやすいヒヤリハットの事例

 

介護は、人と人が関わる仕事のため、ヒヤリハットが発生しやすいといえます。

介護の現場で起こりやすい、ヒヤリハットの事例と対策をいくつか紹介します。

移乗介助

 

車椅子への移乗介助の際に起こりやすいのは、転倒や転落につながるヒヤリハットです。

ブレーキの解除ミスによって車椅子が勝手に動いてしまい、利用者がバランスを崩しそうになる事例がありました。

転倒に至らなければ事故にはなりませんが、事前にブレーキがかかっているかを確認していれば防げる典型的なヒヤリハットです。

利用者の筋肉やバランス力が低下していないか確認したり、転倒防止バーのついている車椅子を活用したりすることでも、転倒や転落事故の発生が防げるでしょう。

食事介助

 

食事介助で起こりやすいのが、誤嚥につながるヒヤリハットです。

急いで食べてしまったり、嚥下能力に合っていない食事形態を提供したり、食事介助中の姿勢が悪かったりするときに起こりやすい事例になります。

食事介助は、介護の中でももっとも注意が必要なケアです。

食事介助中は常に利用者の様子を気にすることが、事故の予防になります。

利用者一人ひとりの嚥下能力に合わせた食事形態で提供することも重要です。

居室

 

利用者が居室にいるときに起こりやすいのが、転落や転倒につながるヒヤリハットです。

ベッドに浅く座っていたり、床に物が落ちていたりすると発生しやすい事例になります。

居室は利用者にとってゆっくりくつろげる空間ですが、入退室時には必ず安全確認が必要です。

介護用ベッドの高さを利用者に合わせたり、床に物を置かないように介護者が気を配ったりする必要があります。

高齢者は骨や皮膚がもろくなっているため、ベッド柵にクッションを設置するなどの対策も必要です。

利用者同士の介助

 

利用者同士の介助によって起こりやすいのが、転倒や誤嚥につながるヒヤリハットです。

歩行中の利用者を手伝うために背後から押してしまったり、食事を食べさせようとしたりするときに起こりやすい事例になります。

利用者の中には認知症を患っている方もいるので、言葉で伝えるのが難しい場合もあります。

その際は職員が必ず付き添ったり、見守ったりする対策が必要になります。

さらに場合によっては、利用者同士の食事や移動の時間が重ならないような配慮が必要になるでしょう。

入浴介助

 

入浴介助の際に起こりやすいのが、転倒や溺水、脱水につながるヒヤリハットです。

利用者が浴槽をまたごうとしたり、浴槽内で不安定な姿勢になったり、長湯をしてしまったりするときに起こりやすい事例になります。

利用者に座位による浴槽への出入りの同意を得ることや、そばで見守ること、適切な水分摂取を促すことなどの対策が必要です。

浴室内は滑りやすくなっているため、滑り止めマットの活用も有効になるでしょう。

服薬

 

服薬の際に起こりやすいのが、飲み間違いや飲み忘れのヒヤリハットです。

薬の準備を間違えていたり、看護師が服薬をチェックしていなかったりするときに起こりやすい事例になります。

薬の保管方法を見直す、手渡しではなく利用者が服薬するところまで確認するなどの対策が必要です。

ヒヤリハットの再発を防止する方法

 

ヒヤリハットの発生を防ぐことは難しいといえますが、一度起きたヒヤリハットの再発を防止することは可能です。

ヒヤリハットの再発防止策を紹介します。

集まった報告書からリスクを特定する

 

まずはヒヤリハットの報告書を集約し、次の3つの項目を整理します。

 

  • 起きやすい日時
  • 起きやすい関係者(利用者、スタッフ)
  • 起きやすい場所

 

同じような条件で多数発生している場合、偶然ではなく必然的に発生している可能性が高いといえます。

ヒヤリハットが突発的なものか恒常的なものかを判断するために、できる限り多くの事例を集めることが大切になります。

ヒヤリハットが発生する傾向を分析すれば、事故の潜在的なリスクが予測できるでしょう。

定期的にマニュアルを見直す

 

ヒヤリハット報告書の内容をもとに、作業方法や作業手順などのマニュアルを更新することが、再発を防ぐことにつながります。

同じ条件で問題が繰り返し発生している場合は、マニュアルに問題がある可能性が高いといえます。

ただしマニュアルを変更すると、新たなヒヤリハットが起きやすくなります。

新しいマニュアルに慣れていないことや、新旧のマニュアルを混同してしまうことが原因です。

マニュアルを変更する際は、変更理由や変更点を明記し、朝礼や会議などで確実に周知するようにしましょう。

職員全体に共有する

 

ヒヤリハットが発生した場合は、単なる記録だけで終わらせるのではなく、報告書の内容を職場全体に共有することが大切です。

朝礼や定期ミーティングなど、全員で再発防止について話し合う機会を作ってください。

組織全体で共有することは、新たなヒヤリハットを防ぐことにもつながります。

ヒヤリハットを報告したら改善されるという流れを作ることが、ヒヤリハット報告の活性化にもつながるでしょう。

事例を検証する

 

ヒヤリハットの事例が集まったら、定期的な検証を実施することが推奨されます。

報告書の内容をただ読むだけでは、危険予測は身につきません。

報告書をもとにイラストや写真を作成し、ほかにどのような危険が潜んでいるか、スタッフ同士で話し合えば危険予知のトレーニングになります。

ヒヤリハットの起こりそうな場面を疑似体験してみるのも、マニュアルを読むより効果的です。

ヒヤリハット事例の共有と検証やトレーニングを組み合わせることで、職員一人ひとりの安全意識と対応力を高めることができるでしょう。

ヒヤリハット報告書に関するQ&A

 

最後に、ヒヤリハット報告書に関するよくある質問に回答します。

記録する目的は?

 

利用者の「介護事故」や職員の「労働災害」の発生を未然に防ぐことと、ヒヤリハットの再発防止が目的です。

ヒヤリハットを収集・分析することで、適切な安全対策を講じることができます。

また、事象を職員内で共有すれば、安全に介助を行う意識が高まるでしょう。

テンプレートはある?

 

厚生労働省のホームページでは、ヒヤリハット報告書のテンプレートや記載例を公開しています。

一部地方の労働局でも、テンプレートのダウンロードが可能です。

法律上の義務はある?

 

労働災害クラスの事故報告に関しては指定基準により記録等が義務付けられていますが、ヒヤリハット事案の報告書の提出や収集に法令上の報告義務はありません。

報告がなくても法令違反にはなりませんが、これから起こる可能性がある重大事故を未然に防ぐため、事業所や施設が自発的にヒヤリハットの収集に取り組むことが大切です。

まとめ

 

今回は、介護職におけるヒヤリハット報告書の正しい書き方について解説しました。

ヒヤリハットは事故ではなく、事故が起こりそうになった一歩手前の段階のことを指します。

介護の現場では、毎日のようにヒヤリハットに該当する事象が発生しているため、ヒヤリハット自体を防ぐことは簡単ではありません。

しかし、ヒヤリハットを報告することで適切な対策が実施できれば、重大な介護事故を防ぐことにつながります。

ヒヤリハットの記録と共有を欠かさず実施し、事故のない安全な介護サービスの提供を目指しましょう。