介護保険法とは?制度の仕組みやサービスについて分かりやすく解説

介護保険法とはどのような法律なのでしょうか。
この記事では、介護保険法に関する基礎知識を解説しています。
介護保険制度の仕組みや介護保険サービス、介護保険施設についても詳しく解説しているので、興味のある方はチェックしてください。
介護保険法に関する基礎知識
施行規則や沿革など、介護保険法に関する基礎知識について解説します。
介護保険法とは
介護保険制度や介護保険で利用できるサービス、介護保険施設の利用について定めた法律が、介護保険法です。
1990年代の日本における、急速な高齢化による要介護者の増加を背景として、2000年の4月に施行されました。
この法律の制定に伴い、介護保険サービスを利用するために必要なケアプランを作成する、介護支援専門員(ケアマネジャー)という専門の職種も誕生しています。
老人福祉法との違い
介護保険法と似ている法律に、老人福祉法があります。
高齢により経済的に困窮していたり、身寄りがなかったりする社会的弱者を、公費で支える法律です。
介護保険法と老人福祉法は、どちらも老人福祉施設や介護サービスについて定めた法律ですが、違いは施行の目的や背景、制度です。
| 法律名 | 介護保険法 | 老人福祉法 |
| 施行年 | 2000年 | 1963年 |
| 目的 | ・家族の介護負担の軽減 ・要介護者の自立支援 | ・高齢者の健康維持 ・生活の安定 |
| 背景 | ・高齢化による要介護者の増加 ・認知症や高齢者介護に対する社会的関心の高まり | ・核家族化の進展 ・高度経済成長期による都市化 |
| 制度 | 契約制度 | 措置制度 |
老人福祉法は措置制度が中心です。
高齢者には行政が必要と判断したサービスが提供されるため、利用者に選択肢はありません。
一方、介護保険法は契約制度を採用しています。
利用者は介護事業者と契約し、自分に合うサービスを選んで利用できます。
介護保険法施行規則とは
介護保険法施行規則は、施行令をもとに厚生労働省が定めるルールです。
介護保険法の細かな手続きやルールを定めています。
- 要介護認定の申請方法
- 介護保険被保険者証の記載事項
- 介護サービス事業者の指定基準
介護保険法施行規則は、介護保険法の改正とともに見直されるのが一般的です。
介護保険法の沿革
介護保険法は、高齢化率や平均寿命の変化に対応するため、3年ごとに改正されています。
施行から現在に至るまでの改正の流れは、次のとおりです。
| 2000年 | 介護保険法施行 |
| 2006年 | ・要支援者に対する予防給付の創設 ・地域包括支援センターの領域の拡大 |
| 2009年 | ・不正をした事業者に対する処分逃れ対策 ・不正事業の再発防止 |
| 2012年 | ・医療と介護の連携の強化 ・介護人材の確保とサービスの質の向上 ・高齢者の住まいの整備等 ・認知症対策の推進 ・保険者による主体的な取り組みの推進 ・保険料の上昇の緩和 |
| 2015年 | ・予防給付を地域支援事業に移行 ・特別養護老人ホームの重点化 ・低所得者の保険料軽減を拡充 ・一定以上の所得のある利用者の自己負担の引き上げ ・補足給付の要件に資産などを追加 |
| 2018年 | ・介護保険事業(支援)計画の策定 ・都道府県による市町村に対する支援事業の創設 ・財政的インセンティブの付与の規定の整備 ・介護医療院の新設 |
| 2021年 | ・地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援 ・地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進 ・医療・介護のデータ基盤の整備の推進 ・介護人材確保および業務効率化の取組の強化 |
| 2024年 | ・介護情報管理システム基盤の整備 ・財務諸表の公表義務化 ・介護予防支援の拡大 ・介護保険料の変更 ・介護報酬引き上げ |
出典:厚生労働省「過去の改正内容」
今後は、2027年に介護保険法が改正される予定です。
介護保険制度の仕組み
介護保険法に基づく介護保険制度の仕組みについて解説します。
介護保険制度とは
介護保険法の施行とともに誕生したのが、介護保険制度です。
加齢や病気によって介護が必要になった高齢者を、社会全体で支える仕組みです。
介護保険制度は、次の3つの理念に基づいて運用されています。
- 自立支援:単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援する
- 利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度
- 社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用
出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」
介護保険制度の被保険者
介護保険制度の被保険者(加入者)は、65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳までの医療保険加入者である第2号被保険者です。
介護保険サービスは、65歳以上の方であれば原因を問わず要支援・要介護状態となったときに利用できます。
40~64歳の方は、末期がんや関節リウマチ等の老化による病気が原因で要支援・要介護状態になった場合に限り、介護保険サービスの利用が可能です。
要介護度
介護保険制度では、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする要介護になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、介護予防サービスが効果的な要支援になった場合に、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることができます。
要介護度と低下している日常生活能力は、次のとおりです。
| 要介護度 | 低下している日常生活能力 |
| 要支援1 | ・起き上がり ・立ち上がり |
| 要支援2・要介護1 | ・片足での立位 ・日常の意思決定 ・買い物 |
| 要介護2 | ・歩行 ・洗身 ・爪切り ・薬の内服 ・金銭管理 ・簡単な調理 |
| 要介護3 | ・寝返り ・排尿 ・排便 ・口腔清潔 ・上衣の着脱 ・ズボンの着脱 |
| 要介護4 | ・座位保持 ・両足での立位 ・移乗・移動 ・洗顔 ・洗髪 |
| 要介護5 | ・麻痺(左下肢) ・食事摂取 ・外出頻度 ・短期記憶 |
要支援2と要介護1の身体状況の目安は同じですが、適切な介護予防サービスにより状態の維持や改善が見込まれる場合は要支援2になります。
要介護認定を受けるまでの流れ
要介護や要支援の状態にあるかの判定を行うのが、要介護認定です。
要介護認定を受けるまでの流れを解説します。
- 要介護認定の申請
- 市町村の認定調査員による認定調査
- 主治医による意見書の提出
- コンピュータによる一次判定
- 介護認定審査会による二次判定
- 判定結果の通知
認定結果の通知は、原則として申請から30日以内です。
要介護認定を受けた後は、介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプランを作成し、介護サービスの利用が開始されます。
介護保険料の負担
介護保険制度では、被保険者が介護保険料を負担し、国や自治体の公費とともに要介護者を支えます。
第1号被保険者は、65歳の誕生日の前日を含む月から保険料の支払いが開始され、年金から天引き(特別徴収)されるのが原則です。
年金受給額が一定に満たない場合は、納付書や口座振替による普通徴収となります。
保険料は自治体によって基準額が異なり、課税状況や所得によって変動する仕組みです。
第2号被保険者は、40歳の誕生日の前日を含む月から保険料の徴収が開始となり、加入している医療保険の保険料に上乗せして支払います。
保険料は加入している医療保険ごとに算定方法が異なるので、詳しい金額を知りたい場合は、加入している医療保険者に確認しましょう。
介護保険サービスの利用限度額
要介護認定を受けた方は、要介護度に応じた利用限度額まで介護保険サービスを利用することができます。
| 要介護度 | 利用限度額 |
| 要支援1 | 5万320円 |
| 要支援2 | 10万5310円 |
| 要介護1 | 16万7650円 |
| 要介護2 | 19万7050円 |
| 要介護3 | 27万480円 |
| 要介護4 | 30万9380円 |
| 要介護5 | 36万2170円 |
出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」
上記の利用限度額は、1カ月あたりの金額です。
自己負担率は費用の1割が基本で、一定以上の所得がある場合は2割または3割になります。
なお、利用限度額を超えた部分は、全額自己負担です。
介護保険制度で受けられるサービス
介護保険制度で受けられるサービスを紹介します。
居宅サービス
自宅で生活を続けるために提供されているのが、居宅サービスです。
介護保険で利用できる居宅サービスは、次の12種類です。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問入浴介護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
居宅サービスは、訪問と通所を組み合わせるなど、柔軟に利用できます。
要介護の方向けのサービスのため、要支援の方は介護予防サービスを利用してください。
介護予防サービス
日常生活の動作に介護が必要な状態の方を支援したり、悪化を防止したりするのが、介護予防サービスです。
介護保険で利用できる介護予防サービスは、次の10種類です。
- 介護予防訪問入浴介護
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防短期入所生活介護
- 介護予防短期入所療養介護
- 介護予防特定施設入居者生活介護
- 介護予防福祉用具貸与
- 特定介護予防福祉用具販売
介護予防サービスの対象者は、要支援1または要支援2に認定されている方です。
地域密着型サービス
サービスを提供する事業者のある市区町村に住む方に提供されるのが、地域密着型サービスです。
介護保険で利用できる地域密着型サービスは、次の9種類です。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
原則として、事業所のある市区町村に住んでいない方は、サービスを利用できません。
対象者は要介護認定を受けている方のみですが、サービスによっては要支援者も利用できます。
施設サービス
要介護認定を受けた方が入所し、生活の全般における介護やリハビリテーションのサービスを受けられるのが、施設サービスです。
介護保険で利用できる施設サービスは、次の3種類です。
- 介護福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
利用者はいずれの施設においても、24時間体制の見守りサービスを受けることができます。
介護保険施設の種類
介護保険施設は民間の介護施設と比較して、費用の負担が軽いのがメリットです。
介護保険で利用できる3つの施設について、詳しく解説します。
介護老人福祉施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、日常生活上の介護や機能訓練、健康管理などのサービスが提供される生活施設です。
社会福祉法人や、地方自治体が運営しています。
介護老人福祉施設の人員基準と設置基準は、次のとおりです。
| 人員基準 | 設備基準 |
・医師:入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
・介護職員または看護職員:入所者3人ごとに1名以上
・栄養士・機能訓練指導員:1人
・介護支援専門員:入所者100人につき1人以上 | ・居室:原則定員1人(入所者1人あたりの床面積10.6平方m以上)
・医務室:医療法に規定する診療所
・食堂および機能訓練室:床面積は入所定員×3平方m以上
・廊下幅:原則1.8m以上
・浴室:要介護者が入浴するのに適したもの |
出典:厚生労働省「介護老人福祉施設」
入所費用は月額費用のみで、入所一時金は必要ありません。
部屋の種類や、要介護度によって料金が変動します。
利用対象者は、次のとおりです。
- 65歳以上で要介護3以上
- 40~64歳で特定疾病が認められた要介護3以上
- 特例により入所が認められた要介護1~2
いずれかに該当する場合でも、認知症の進行に伴い、問題行動を起こす可能性がある場合は入所を断られる可能性があります。
特別養護老人ホームでは要介護者が身体介護や生活支援を受けながら、長期的な入所が可能です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、医療機関で治療を受けた後にリハビリを集中的に実施し、在宅復帰を目指すことが目的の施設です。
都道府県知事の開設許可を受けた医療法人、または社会福祉法人が運営しています。
介護老人保健施設の人員基準と設置基準は、次のとおりです。
| 人員基準 | 設備基準 |
・医師:常勤1人以上
・薬剤師:入所者300人につき1人
・介護職員または看護職員:入所者3人につき1人(うち看護は2/7程度)
・支援相談員:入所者100人につき1人以上
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:いずれか1人以上
・栄養士・機能訓練指導員:1人
・介護支援専門員:入所者100人につき1人以上 | ・居室:1室当たり定員4人以下(入所者1人あたり8㎡以上)
・機能訓練室:1㎡×入所定員数以上
・食堂:2㎡×入所定員数以上
・廊下幅:1.8m以上(中廊下は2.7m以上)
・浴室:体の不自由な者が入浴する のに適したもの |
出典:厚生労働省「介護老人保健施設」
利用対象者は、65歳以上で要介護1~5に認定されている方です。
介護老人保健施設の最大の特徴は、原則として3カ月の入所期間が定められていることです。
ただし、在宅環境を整えるのが困難な場合は、在所期間の更新が可能です。
介護医療院
介護医療院は、長期的な医療と介護が必要な高齢者に、長期療養のための医療と日常生活上の介護を一体的に提供する施設です。
介護療養病床相当のサービスが受けられるI型と、老人保健施設相当以上のサービスを提供するII型の2種類があります。
介護医療院の人員基準と設置基準は、次のとおりです。
| 人員基準(I型) | 人員基準(II型) | 設備基準 |
・医師:48人につき1人
・薬剤師:150人につき1人
・看護職員:6人につき1人
・介護職員:5人につき1人
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:適当数
・栄養士・機能訓練指導員:1人
・介護支援専門員:入所者100人につき1人以上
| ・医師:100人につき1人
・薬剤師:300人につき1人
・看護職員:6人につき1人
・介護職員:6人につき1人
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:適当数
・栄養士・機能訓練指導員:1人
・介護支援専門員:入所者100人につき1人以上 | ・診察室:医師が診察を行うのに適切なもの
・療養室:1室当たり定員4人以下(入所者1人あたり8㎡以上)
・機能訓練室:40㎡以上
・談話室:談話を楽しめる広さ
・食堂:1人あたり1㎡以上
・廊下幅:1.8m以上(中廊下は2.7m以上)
・浴室:体の不自由な者が入浴するのに適したもの |
出典:厚生労働省「介護医療院の概要」
利用対象者は、65歳以上で要介護1~5に認定されている方です。
介護医療院の費用は、施設の形態や要介護度、職員の配置人数により変動するのが基本です。
また、施設サービス費のほかに居住費や食費、日常生活費などが必要になります。
介護保険法の改正
ここでは、2024年度に施行された介護保険法改正について解説します。
介護情報管理システム基盤の整備
介護情報を一元的に管理するシステム基盤を整備することが、改正によって決定されました。
今後は自治体や利用者本人、介護事業所、医療機関が、必要な介護情報を共有して利用できるようになります。
これにより、自治体と介護事業所、医療機関が一体となって介護を提供する、地域包括ケアシステムの推進が目指せるでしょう。
財務諸表の公表義務化
2024年4月より、すべての介護事業者に対し、財務諸表等の経営状況の公表が義務づけられました。
今後は施設ごとに、財務状況を都道府県知事に提出する必要があります。
公表を義務化したのは、国が財務状況を把握して分析し、必要な支援策を実施するためです。
介護予防支援の拡大
要支援者を対象とした介護予防支援が、地域包括支援センターだけでなく、居宅介護支援事業所でも受けられるようになりました。
居宅介護支援事業所が介護予防支援の業務を担うことで、地域包括支援センターに負担が集中するのを防ぐのが目的です。
介護保険料の変更
介護サービス利用者の増加や、介護職員の処遇改善を行うために、65歳以上の方が支払う介護保険料が変更されました。
全国平均で3.5%の値上がりです。
前回の変更から、約200円の値上がりとなります。
介護報酬引き上げ
介護業界の状況に合わせて、介護報酬の改定が行われました。
2024年度の介護報酬改定率は、1.59%引き上げられています。
また、処遇改善加算の一本化による賃上げや、光熱水費の基準費用額の増額による介護施設の増収により、さらに0.45%引き上げられる見込みです。
事実上2.04%の引き上げになります。
2027年以降の介護保険法改正について
最後に、今後改正が検討されている項目を紹介します。
複合型介護サービスの創設
介護ニーズの多様化に対応するため、訪問介護や通所介護などの在宅介護サービスを一体化した、複合型介護サービスの創設が提言されていました。
サービスの質が低下するなど反対の声が多数上がり、今回は見送られています。
ケアプランの有料化
介護保険サービス利用時に、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するケアプランの有料化が検討されました。
しかし、利用控えが起こるという反対意見が多く上がり、今回も見送られました。
自己負担割合の引き上げ
原則1割となっている自己負担割合の引き上げが検討されましたが、今回は見送られました。
介護サービスの利用が増えているため、次回の改正で再検討される可能性があります。
要介護向けサービスの総合事業への移行
軽度(要介護1~2)の要介護向けサービスを介護保険制度から除外して、市区町村の運営する総合事業への移行が検討されました。
実施されると自己負担額の変更が必要になるため、今回は見送りとなりましたが、再検討される可能性が高くなります。
まとめ
今回は介護保険法の概要について、詳しく解説しました。
介護保険法は、介護保険サービスや介護保険施設の利用について定めた法律です。
高齢化による要介護者の増加に伴い制定されました。
介護保険法は、高齢化のスピードや状況に合わせて改正される仕組みです。
介護が必要な状況で適切なサービスを受けるために、介護保険制度の内容を随時チェックしておくようにしましょう。





