【介護コラム】近くて遠いー第3話ー

第三話
キューピー人形の件から二年ほどが経ち、私はそのデイサービスを退職し、知人が立ち上げた会社で訪問介護の仕事に就くことになった。
自転車移動をしながら、かつて自分が運転していた送迎車とすれ違うのはどこか不思議な感覚だった。その後、会社ごとケアリッツと合流し現在に至るのだが、ちょうど吉祥寺の立ち上げに参画させてもらった時のこと、杉並事業所宛に来た新規の中で、どうしても距離が遠く、吉祥寺で対応できないかという相談が舞い込んできた。
アルツハイマー型の認知症、独居、女性、キーパーソンの娘はドイツ在住、聞き覚えのある内容ばかりで担当のケアマネジャーも同じ。巡り合わせの面白さに思わず身震いした。
早速ケアマネジャーと連絡を取った。思った通り、やはりYさんの依頼であった。思い出話など交えながら、依頼に至った経緯の確認や、担当者会議の日程調整等を行い、再会の日に備えた。
自宅の中は数年前の記憶とほぼ変わらず、初めて伺った時と同じ場所にYさんは腰かけていた。やや全体的に縮んだような印象を受けたが、元気そうな姿にほっとした。「お久しぶりです」と挨拶すると「覚えてないわ」と。どこかで再会を喜んでくれるのではと期待していた自分が、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
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