【介護コラム】近くて遠いー第5話ー

第五話
可能性があるということは聞いていたので、多少は心の準備をしてはいたが、いざ迎え入れが不要になったという報せを受けた時は、やはり落胆の色は隠せなかった。
そもそもが認知症は治ると信じている娘ということもあって、コタツでのリスクがなくなった以上、自分のことは自分でやらせたいという意向があがり、夕方のケアは無しになったのである。
デイサービスの迎えの時間に合わせて準備をすることは難しいという理解はあったので、朝の対応は残ったものの、週に一度の枠しかなく、ほとんど顔を見る機会のないまま時間が過ぎていった。
季節はめぐり、そろそろ夏の予感が空気に混ざってきた頃、ケアマネジャーから連絡が入った。話によると、迎え入れの対応を中止してからというもの、帰宅後そのまま床で寝て翌朝のヘルパーが発見するということが増え、どうやら満足に水分も摂れていないようで、大分弱ってしまっているというのだ。
ドイツ在住の娘からは既に了承を得ているので、迎え入れの対応を再開して欲しいということだった。
二つ返事で了承し、早々に夕方のサービスは再開された。絶対に元気にしてみせる、ただその一念であった。