【介護コラム】近くて遠いー第6話ー

第六話
Yさんの状態は思っていた以上に深刻なものであった。果たしてデイサービスに行くことが正しいのかどうかさえ疑問を感じるほどに、心身ともに疲弊しきっていた。
とはいえ誰の目も無いところで日中を一人で過ごすなど、それこそリスクでしかないことも分かっていたので、送り出しては向かえ入れ、迎え入れては送り出す日々を繰り返していた。食欲低下は顕著で、いよいよ自分では食べることも飲むこともままならなくなってきたので、「一口でも多く」を合言葉に、アイスクリームなど、比較的本人も抵抗の少ないものを見つけては一匙一匙介助して召し上がってもらった。
情報共有は連日のようにされ、一進一退する飲食量を見つめながら、どうか明日も目を覚ましてくれますようにと、神にもすがる思いでいた。
季節は真夏。いよいよ脱水や熱中症も懸念され始めたので、デイサービスの無い日にも自費を織り交ぜながら朝、昼、夕と訪問を増回し、さすがに要介護2ではないだろうと、関係者満場一致で区分変更申請をかけた。たまたまケアの時間と重なるように認定調査の予定が組まれ、調査員の方に日頃の様子やこれまでの経緯をこと細かく伝えることが出来た。
それが功を奏したのか、認定の結果は要介護5。かなり膨れ上がっていた自費分もこれで大分解消される。