【介護コラム】近くて遠いー最終話(12話)ー

第十二話
翌日、Yさんは予定どおり入所した。Yさんのことだ、あっという間にユニットのアイドルになるに違いない。そんなことを考えながら、Yさんの名前が消えたシフト表を眺めていた。
入所後しばらくして、食欲が旺盛すぎて体重増が止められず、着るものに難儀しているという話を耳にした。娘夫婦が帰国するたびにYさんの好物を沢山差し入れているらしく、見る見るうちにふくよかになってしまったらしい。夏場、一時は30キロ代まで体重が落ち、全員で必死になって食事や水分の介助をしていた頃が思い出された。入所した施設は電車でちょっとの距離だったので、いつでも会いにいける。近いうちに、どれくらいふくよかになったか見に行ってみよう。
2016年11月25日、事業所に掛かってきた一本の電話で、Yさんがご逝去されたことを知った。体調を急に崩し、あれよあれよという間に息を引き取ったそうだ。いつでも会いにいける距離の遠さを痛感した。
「人生で初めてヘルパーとしてサービス提供させて頂きました。不慣れな私を温かく迎え入れてくださり、介護のやり方や楽しさなど色々な経験をさせて頂きました」
当時新卒で入社したばかりだったとある社員からの言葉である。立派に成長した今の姿を、一目でいいからYさんに見せてあげたかった。