【介護コラム】ALS(コイツ)と戦うー第9話ー

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介護ヘルパーとALSを発症した医師との実話
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手早く準備を整え入浴介助が始まった。テーブルの椅子から車椅子へ、1メートルほどの歩行介助であったが、伸びない背中と膝、数センチ進むのに永遠にも感じるほどの時間を費やす足の運び、その動作一つ一つを体で受け止めながら、病気の進行に胸を締め付けられた。

身体の可動域や、立位保持の時間、体力の確認をしていくうちに、体が自然と動き、不安に思っていたパズルのピースが収まり始め、次第に彼の声もかつてのように聞き取れるようになった。

「なんだ、まだできるじゃん」と痛めた脇腹をさすりながら半笑いのNを横目に、動きがスムーズになっていく自分に気付き、いつしか緊張も自然とほぐれていった。

OKの合図の「ん」というサインが、うっかりすると聞き逃してしまうほど小さくなっていることや、サーカスの妙技さながらの移乗など、Nの口頭フォローを受けながら新旧の方法を織り交ぜ、全行程を75分で終えた。

達成感を噛み締めながら、帰りの道中、堪らずに買って呑んだ缶ビールの美味さと言ったら言うまでもない。

つづく

CURATOR
コラム著者/佐近健之 (介護支援専門員・介護福祉士・社会福祉士)
東京都出身。介護現場経験を経て、現在は介護人材の教育を担当しています。
音楽好きのビール党です。
Illustrator/エム・コウノ
千葉在住。デイサービススタッフとして勤務しています。
休日はイラスト、マンガ描いてます。似顔絵などイラストのご相談承ります!