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コロナに関して、介護職員がPCR検査をむやみに受けない方が良い理由

コロナに関して、介護職員がPCR検査をむやみに受けない方が良い理由

以前にコロナ関連の記事を書いてから、早くも5カ月ほど経ちました。

過去記事その1;
介護職なら知っておくべき!?新型コロナ・インフルなど感染症予防の基礎知識

過去記事その2;
介護職が知っておきたい、新型コロナウイルスに関する情報

この間に、緊急事態宣言があり一度感染者数も落ち着きましたが、宣言解除後に再び患者数は増え、第2波がいよいよ到来しそうな状況となっています。

ただ今回は、以前の第1波のころとは違い、いろいろと医療体制が整いつつあります。
特にPCR検査数については、2月・3月に比べると現在では検査数は5倍以上に増えており、以前よりもPCR検査を受けられるハードルはかなり下がってきています。
おそらく、唾液で簡便に検査が出来るようになったことも大きいでしょう。

というわけで、現在では、感染が疑われる人についてはしっかりPCRが受けられる状況にはなった、と言えるかと思います。

しかし、メディアでは、「旅行に行く人全員にPCR検査を受けさせろ」といった意見や、「医療福祉など職種によっては、職員全員がPCRを受けるべし」といった意見も聞かれます。
実際社内においても、例えばコロナ陽性者が発生したデイサービスに通っている利用者と、お互いマスクごしに少し会話をしてしまったから、念のためPCRを受けたい、といった要望が出てくることがあります。

果たして、PCR検査を、感染リスクがほとんどない人でも望めばいつでも受けられる環境にすることは望ましいのでしょうか?

結論から言えば、「感染している確率が低い(例えば1%程度)人に対してPCR検査を行うことは、むしろ混乱を招く可能性があるため避けるべきでは?」と考えています。
PCR検査については、感染のリスクが一定以上ある人間に対して積極的に行うべきでしょう。

その理由を今回は解説したいと思います。

PCR検査の原理とは?

そもそも、PCR検査の原理をご存知でしょうか?
PCRとは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略であり、DNAサンプルから特定領域を数百万〜数十億倍に増幅する手法のことを指します。ポリメラーゼ、というのはDNAやRNAなどを合成する酵素のことです。

詳しい原理は省きますが、以下の図のように、元となるDNAについて、

①バラバラにする
②特定の配置のところに起点(プライマー)をくっつける
③起点から、1本になったDNAの対になる塩基をくっつけて伸ばしていく

これを延々と繰り返していくことで、2つの起点に挟まれた部分のDNA鎖を倍々ゲームで増やし、検出できるような量にする、という仕組みです。

完全なPCRサイクルの概略図

出典; wikipedia

今回のコロナウイルスの場合には、RNAウイルスなので、RNAをDNAに逆転写するステップが最初に入りますが、基本的な考え方は一緒です。

つまり、検体の中に1つでもコロナウイルスと同じ配列のRNAがあればそれが増幅され、検査で陽性、と判定される、というわけです。

PCR検査の精度

PCR検査については、実はあまり精度が高くないことが知られています。

感染者に対して正しく陽性と判定される割合のことを「感度」、逆に感染していない人が正しく陰性と判定される割合のことを「特異度」と言います。

ざっくりとPCR検査の感度は70%前後(参考リンク; 日本疫学会のページ)、特異度は99%くらい(専門家会議・厚労省の見解による)と言われています。

つまり、感染者100人を検査すると陰性と出てしまう人が30人くらいいて、また感染していない人100人を検査すると陽性と出てしまう人が1人いる、というわけです。

なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?

まず感度についてですが、一番大きな理由は、ちゃんと検体が取れていない可能性がある、という点です。
例え感染者であっても、綿棒などで拭った場所にたまたまウイルスがいないケースなどがありえます。感染者であっても、必ずしも鼻の奥の粘膜にコロナウイルスがいるとは限らないのです。
また、そもそも採取技術の問題で検体がうまく取れていないケースなどもありえます。

そして、今話題になっているイソジンですが、これも今後は偽陰性を誘発する要因となりうるでしょう。
コロナウイルスに罹患した人がイソジンでうがいをした後は、唾液中からコロナウイルスがいなくなります。この状態で、唾液のPCRをやった場合には、陰性と出るでしょう。
しかし、あくまで唾液中から一時的に消えただけであり、体内ではコロナウイルスが増殖を続けている状態なのでこの人は立派な「患者」であり、感染力も持っています。

逆に特異度については、検査を行うなかで検体のコンタミネーション(混ざってしまうこと)が起きてしまったりといった、手技上のミスがまず考えられます。
こういった事態は、まったく陽性者がいなければ起き得ませんが、一定数の陽性者が出ている状況ではより起こりやすくなるでしょう。実際検体の取り違えが発覚したケースなども、ニュースになっていました。

また、PCRという手法は1つのDNA片からでも検出ができてしまう手法なので、超微量なウイルスや、感染力のないウイルスの死骸(RNAの破片)のようなものまで検出してしまう、というのも、偽陽性(というか、PCR陽性だが感染はしていないし人にも感染させない)の一因かと思います。

特に日本においては、台湾、米国などに比べてもPCRの基準が厳しく、ウイルスを増幅させる回数を多く設定しています。その分、感染力のない陽性者を量産してしまっている可能性は大いにありえるのです。

そもそも、のどの表面にウイルスのかけらや超微量のウイルスが付着したとしても、それがその後体内に侵入することがなければ、発症することも人に感染させることもありません。

人がウイルスに感染するには、ある一定以上のウイルスに曝露されることが必要で、それ以下の量のウイルスが咽頭に付着したとしても、マクロファージを始めとする自然免疫で処理されてしまうことがわかっています。

それに、今は、PCRが仮に陽性であっても発症から10日、解熱から3日過ぎていれば職場復帰OK、という基準にもなっていることからも、陽性=感染力がある、とは言えないことがわかります。

偽陽性・偽陰性問題

さて、PCR検査の精度がそこまで高くはない、ということはご理解いただけたかと思いますが、特に感染していなければ99%の確率でちゃんと陰性と出るわけなので、そこまで大きな問題ではないように思えます。

しかし、ここに大きな問題があるのです。

偽陽性問題として知られる話なのですが、感染していない人に対して陽性と出てしまう可能性はたった1%であっても、感染者の率が極めて低い母集団だった場合、万が一自身が陽性と診断されてもそれをすぐに信じることはできません。
(特異度のところは、99%と見るのが正しいのかどうかは意見が分かれるところではあるのですが、上記のような偽陽性が出る原理を考えると、そこまでおかしな数字ではない、と個人的には考えています。)

例えば10000人のうち100人が感染者、という状況だと想定します。

ちなみに日本の人口約1億人のうち現在の累積患者数は25000人、つまり10000人のうち2.5人という状況です。特にコロナが蔓延している東京で考えてみても人口1400万人のうち累積患者数は9400人、つまり10000人のうち7-8人といったレベルです。

なのでこの想定は、無作為に人を選んだ場合よりも感染している確率が相当高い母集団です。
例えば、何か感染の心当たりがある、陽性者と濃厚接触ではないが軽く接触した、といった人たちの集団と考えても差し支えないでしょう。

この条件で100人の感染者に対してPCR検査を行うと、70人が陽性と判定され、30%が陰性と判定されます。
また、9900人の非感染者に対してPCR検査を行うと、99人が陽性と判定され、9801人が陰性と判定されます。

さて、ではこの集団全員に検査を行い、そのうちの1名がPCRで陽性と言われた場合、その人にとってその結果はどの程度信じられるものでしょうか?

陽性と言われる人は、この10000人の中で169人いるわけですが、そのうち本当に陽性なのは70人で、残りの99人は感染していないのに間違って陽性、と判定されてしまった人です。
つまり、PCRで陽性と言われたとしても、その人にとって本当に感染している確率は、41%しかない、ということになってしまうのです!

ちなみに、感染者の数が多い母集団で考えると陽性的中度は上がっていきます。

例えば10000人のうち1000人が感染している状況であれば、89%、5000人が感染している状況であれば、98.5%、となるため、陽性と判定されればほぼ感染していると判断できます。

さて、介護職員が、自身の感染の確率は低いにも関わらず、念のため安心したい、という理由でPCRを行った場合どうなるでしょうか?

まず、陰性、と出た場合。しかし、陰性だったとしても安心するわけにはいきません。なぜなら、仮に感染していた場合でも、3割の確率では陰性と出てしまいます。
それに何より、検体採取後に新たに感染している確率もゼロではありません。ある時点の一瞬において、感染していない、ということが分かっても、市中感染が増えてきている状況では意味がないのです。
それでも人間の心理として、陰性、と判定されれば、自分は感染していない!と考えるでしょう。そうなると、必要な予防措置などが疎かになってしまう可能性があります。

そして、陽性と出た場合。しかし先ほど見たように、陽性と出たとしても、実際は感染していない可能性の方が高いのです。
しかし、PCRで陽性と出てしまっている以上、本当は感染していなくても本人は隔離の上で入院となり、社会復帰させてもらえるまでにかなりの時間がかかってしまうでしょう。
特にもし、それが介護職員であれば、その被害はさらに甚大です。風評被害で事業所は大変なことになるでしょうし、事業停止に追い込まれてしまう可能性まであります。

まとめ

ここまで見てきた通り、例えば1割以上の確率で感染している!と思われる状況であればPCRをやる意義はあります。しかし、マスクをした上で軽く言葉を交わした程度だったり、濃厚接触ではないレベルの接触では、感染している可能性は限りなく低い状態です。

もちろん、特に感染経路に心当たりがないが微熱がある、といった状況でも同様です。発熱する原因は非常に多くあり、本来冬は様々な種類の発熱を引き起こす感染症が蔓延しています。
今の感染率であれば、発熱したとしてもそれがコロナである確率は極めて低いと言えるでしょう。

ただし、市中感染がより広がり、ほとんどが感染経路不明という状況であれば、熱を出した→すぐにPCR、という方針でも良いと思います。

とはいえ、「安心したい」「念のため」、こんな理由でPCRを例えばすべての職員に行う、といったことは、むしろ事態を混乱させ、悪影響である、ということが分かっていただけたのではないでしょうか?

なのでPCRについては、すべての人に無差別に行うというよりは、感染した可能性が一定以上ある層に絞って行う、というのが効果的と言えるでしょう。

もちろん、感染した可能性があるのにPCRができない、という状況についてはすぐにでも改善していくべきなのは言うまでもありません。
必要な人に対して、迅速にPCR検査を行っていく、というのが重要だと思っています。

WRITER
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ペーパー薬剤師。

 

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