【薬の知識】糖尿病に関わる薬 Vol.3- ビグアナイド系経口血糖降下剤

少し間が空いてしまいました。

前回までは、糖尿病という病気についての解説から、薬のカテゴリーや作用機序を紹介してきました。
今回からは、さっそくそれぞれの薬のカテゴリーをご紹介していきます。

今回は、下の図で言うと一番上、ビグアナイド薬という薬剤についてです。

ビグアナイド薬とは?

過食や運動不足などを続けて肥満になると、糖を筋肉細胞に取り込ませるインスリンの働きが阻害されて、食後に上がった血糖値が下がりにくくなってしまいます。ビグアナイド薬には、このインスリン抵抗性を改善し、インスリンの効きを良くする作用があります。

他にも、空腹時には肝臓からエネルギーを供給するため、血中に糖が放出されるのですが、この放出を抑える(糖尿病の人だと、しばしばこの放出が過剰になることがわかっています)作用も持つため、食後と空腹時の両方の血糖値のコントロールに有効です。

上記の2つが主な作用なのですが、そういった作用を持つ医学的な理由については実は最近になって分かってきています。出来るだけ簡単に言えば、糖や脂肪からエネルギー(ATP)を作り出す際に使われる酵素であるAMPキナーゼ(AMPK)というものを活性化することで、エネルギーの産生効率を高める、といった作用のようです。
これによって、脂肪の消費を活性化して脂肪肝によるインスリン抵抗性を改善したり、乳酸から糖を生成するのを抑えて血糖値を下げる、という方向に働くのです。

余談ですが、血糖値を下げること、脂肪を減らすこと、というのは実は昨今アンチエイジングの基本と言われることでもあり、実はこのビグアナイド薬、アンチエイジング作用がある、といった話や、寿命を延ばす働きがある、という臨床研究も出始め、「若返りの薬」などとにわかに注目を集めてもいます。

ビグアナイド薬の歴史

実は、非常に歴史の古い薬剤で、古くは中世ヨーロッパで使われていた糖尿病に効く薬草、フレンチライラックに含まれていた「グアジニン」という成分が元となっています。

その後、1957年頃にグアジニンと似た構造を持つフェンホルミン、ブホルミン、メトホルミンのビグアナイド薬が登場しました。ところがその後フェンホルミン、ブホルミンという薬剤では「乳酸アシドーシス」という死亡例もある重篤な副作用が報告され、フェンホルミンは販売禁止、ブホルミンもあまり使われなくなりました。

その結果、SU薬というインスリン分泌を促進する薬剤の方が一時期主流になったのですが、臨床データなどが新たに出たことで再評価され、今では2型糖尿病の第一選択薬として幅広く使われています。

今は比較的乳酸アシドーシスを起こしにくいメトホルミンのみが、「メトグルコ」「グルコラン」という名前で販売されています。

乳酸アシドーシスとは?

ビグアナイド薬を語るときに避けて通れないのが、乳酸アシドーシス。

これは何かというと、上記の作用機序の中であった、「乳酸から糖を生成するのを阻害する」という効果が行き過ぎて、体内の乳酸濃度が高まってしまった状態を指します。

その結果血液が酸性に傾き、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、けいれんなど、進行すると過呼吸、脱水、低血圧、昏睡状態などの重篤な症状を引き起こします。

ただ、メトホルミンに関しては、年間10万人あたり数例のみの報告ということで、正しく使えば、発生率は非常に低いです(ただし、発症時の死亡率は非常に高い)。
しかし増えた乳酸は肝臓で代謝されること、またメトホルミン自体は腎臓から排出されること、などから、肝臓や腎臓の機能が落ちている場合には、慎重な投与が必要です。

疲れやすい、むくみがある、といった症状から肝機能や腎機能の低下が疑われるため、そういった患者の場合には血液検査などを実施し、投与が可能か見極める必要があるのです。
あとは、脱水なども危険因子と言われています。
いずれも高齢の場合よく見られる症状でもあり、高齢者への投与にも注意が必要です。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみに薬剤師の資格を持っていますがペーパーです 笑