【薬の知識】糖尿病に関わる薬 Vol.4- チアゾリジン薬

またまた、だいぶ時間が空いてしまいました。

糖尿病の薬シリーズ第4弾、ということで、前回のメトホルミンに代表されるビグアナイド薬につづき、今回はチアゾリジン薬を取り上げます。

チオゾリジン薬とは?

 

作用機序は、上記の表を見ても分かる通り、インスリンの分泌量は変えずに、インスリンの相対的な作用を高めて血糖値を下げる、というもの。糖は主に、筋肉や肝臓から取り込まれたり放出されたりするのですが、その取り込みを促進するのがインスリン、それを援護するのがチオゾリジン薬、という関係です。

それまでは、インスリン分泌を促進するような薬剤が主流だったこともあり、非常に画期的ということで広く使われるようになりました。

何が優れているか、というと、インスリン分泌を促進する薬剤の場合に懸念されるのが、インスリンが過剰になってしまうことで逆に低血糖を引き起こしてしまうことなのですが、この薬剤の場合にはインスリンを増やすわけではないため、そのリスクがありません。

詳しい作用機序は少し複雑ですが、核内受容体のPPARγに作用し、脂肪細胞の分化を促進、肥大化した脂肪細胞を正常の小型脂肪細胞に置き換える、というもの。簡単に言えば、インスリンの効きを悪くする存在である脂肪細胞を正常化する、というイメージですね。

チオゾリジン薬の歴史

ここまで、チオゾリジン薬、とずっと書いてきましたが、実は現在ではこのカテゴリーに属する薬はただひとつ。

その名も、武田薬品工業の「アクトス」という薬剤です。過去にはノスカール、アバンディアといった名前の薬もありましたが、重篤な副作用による死亡例を何件か引き起こしたため市場から撤退しています。

実はこれらの2剤はアクトスよりも先行して上市されていたのですが、彼らの失敗を見て、武田の研究者は焦ることなく、候補薬物を副作用と作用強度のバランスを取りながら慎重にスクリーニングをし、本薬剤に絞り込むことが出来たようです。

このアクトス、2009年のピーク時には年間3962億円を全世界で売り上げた日本発のブロックバスターで、2011年にパテントが切れるまで、日本最大の製薬企業である武田を支え続けた、非常に有名な薬剤です。

1989年に米国、91年に日本で臨床試験が始まり、それぞれ97年、99年に上市されています。

作用機序のところを見ても分かる通り、特に脂肪が原因の糖尿病に強く、高脂血症や肥満の方に対しては非常に強い効果を発揮することから、国外でも高い評価を得て、90か国以上で販売されてきました。

パテント切れ後は、「ピオグリタゾン」という一般名で20社以上が後発品を発売しています。

アクトスの副作用

上記のように、非常に副作用は少ないです。

ただ、尿細管でNaと水の再吸収を促進することがわかっているため、心不全・浮腫の出現に注意が必要で、医師による観察を続けながらの投与が望ましいと言えます。副作用が出てしまったら、食事制限による減塩を強めたり、利尿薬などで対処していきます。

そして、アクトスを語る際に避けて通れないのが、膀胱がんのリスク向上、という説です。当初、こうした臨床データを隠していたということで米国では訴訟となり、2800億という多額の和解金を支払うことになりました。

しかしその後さらに大規模な臨床検査が何度も行われましたが、明確なリスクと言えるほどはっきりした結果は得られていません。ただ、ある程度優位な結果が得られてしまった欧州では、国によっては投与制限があり、日本でも、膀胱がん治療中の患者には禁忌、となっています。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみに薬剤師の資格を持っていますがペーパーです 笑