【薬の知識】糖尿病に関わる薬 Vol.7- DPP-4阻害薬

薬の知識シリーズ、なんと1年ぶりの更新です・・・
読んでくださっている方が多いシリーズではあるのですが、すっかりご無沙汰してしまいました。

さて、気を取り直して今回は糖尿病に関わる薬の第7弾をお届けします。

糖尿病治療薬の中で、現在の主役!といっても過言ではない、DPP-4阻害薬をご紹介します。

DPP-4阻害薬とは?

血糖値が高い状態が続いてしまい、それにより血液の粘性があがり、末端において毛細血管が詰まってしまう(糖毒性)、あるいは腎臓が疲弊してしまう、というのがそもそも糖尿病の実態です。

粗っぽく説明してしまうと、血糖値は食後に上昇し、それに対してインスリンが分泌されることで血糖値が下がる、というのが正常な状態なのですが、体が血糖値が高い状態に慣れてしまいインスリンの分泌自体が少なくなってしまったり、インスリンを分泌しても体が反応してくれなくなったりするのがその原因です。

ですので、糖尿病薬の仕組みというのは、インスリンに反応しやすくする、インスリンを強制的に分泌させる、血糖値自体を物理的に下げる、といったものになってきます(上記の図参照)。

今回紹介するGPP-4阻害薬は、カテゴリーとしては新しく登場した薬剤で、今の糖尿病治療薬の主役、といっても過言ではない薬剤となっています。

基本的な仕組みとしては、これまでご紹介してきたSU薬やグリニド系と同じように、インスリンの分泌を促進するような働きをします。

DPP-4阻害剤の特徴と代表的な薬剤

DPP-4阻害剤の作用機序を語るには、「インクレチン」というホルモンについて説明する必要があります。

元々、ブドウ糖を経口または経静脈的に投与すると、経口投与のほうがインスリンが数倍多く分泌されることから、消化管でブドウ糖に反応してインスリン分泌を促す何らかのホルモンが分泌されているのでは?と考えられていました。

このホルモンが「インクレチン」というホルモンです。
インクレチンには、小腸上部から分泌されるGIPと、小腸下部から分泌されるGLP-1の2つの種類があります。この2つには部位以外にも違いがあり、GLP-1については、インスリンの分泌を増やすとともに、インスリンと逆の働きをするグルカゴンの分泌を抑制する効果もあることがわかりました。一方で、GIPには、脂肪の蓄積作用があることから、薬剤のターゲットとして特にGLP-1が注目を集めるようになったのです。

血中でのGLP-1の挙動を見ると、分泌された後DPP-4という酵素によって速やかに分解され、わずか2分で半減期を迎えます。ちなみにGIPも同様にDPP-4によって分解され、半減期はわずか5分です。

そこで、このDPP-4の働きを阻害してやることで、長時間GLP-1(及びGIP)が作用するようにしたのが、このDPP-4阻害薬の仕組み、というわけです。

この薬剤の優れたポイントとしては、まずGLP-1が血糖値上昇に伴い分泌される物質だということです。つまり、空腹時など血糖値が低い状態の時には作用しないため、低血糖を引き起こす心配がない、というのが大きな利点です。また、1日1-2回の投与で効果が見られ、食事の影響も受けない、ということで服用のしやすさも良い点です。

また、新たな効果として、膵β細胞保護・増殖作用があるのではないか?というのも動物実験で示唆されているようです。膵β細胞というのはインスリンを分泌する細胞であり、ここが破壊されることが糖尿病の原因でもあるため、対症療法ではなく根治治療となりうる可能性を秘めているわけです。

そして、先ほど述べた通り、GLP-1にはグルカゴンの分泌抑制作用もあり、これもより自然な形で血糖値を下げるというこの薬の特徴に寄与していると考えられています。

初めてこのカテゴリーの薬剤が市場投入されたのは2009年末。小野薬品とMSDがそれぞれ同じ薬剤を、グラクティブ、ジャヌビアという異なる名前で同時に発売したのを皮切りに、トラゼンタ(ベーリンガーインゲルハイム)、エクア(ノバルティスファーマ)、ネシーナ(武田薬品工業)、テネリア(第一三共)、スイニー(三和化学)、オングリザ(協和発酵キリン)とたくさんの薬剤が発売されています。

さらにその後、1週間に1度飲むだけで済むDPP-4阻害薬として、ザファテック(武田薬品)、マリゼブ(MSD)といった薬剤も登場しています。

GLP-1受動体作動薬について

ちなみに、DPP-4を阻害するのではなく、DPP-4で分解されないようなGLP-1の類似品を作る、という考え方もありえますよね?
その発想から生まれたのがGLP-1受動体作動薬です。

カテゴリーの表にも載せていなかったのですが、実は日本ではあまり投与されていない薬剤でもあります。
代表的な薬剤として、ビクトーザ、バイエッタ、ヒデュリオン、リキスミアといった薬剤があるのですが、いずれも注射薬なのが、その理由です。

ただ、専門家によっては、GIPを増やすことがないため、体重の増加を引き起こさない、など、DPP-4阻害剤よりも優位性があると考えている人もいるようです。

2019年9月追記; 
7月に、ノボノルディスクから、初となる経口のGLP-1受動態作動薬の承認申請がなされたそうです。

そもそも経口薬がなかった理由は、GLP-1のようなペプチドホルモンはタンパク質分解酵素によって消化管で分解されやすく、また、分子量が大きく胃から吸収されづらい、という理由でした。
今回の経口セマグルチドはサルカプロザートナトリウム(SNAC)という吸収促進剤をくっつけることで、これらの問題点をクリアした製品とのことです。

上記のように体重の増加を引き起こさない、といったメリットもあるため、今後の糖尿病治療の勢力地図が変わる可能性を秘めていると言えるでしょう。

薬剤投与時の注意点

まず、これらの薬剤は2型糖尿病のみ使用が可能です。というのも、1型は元々インスリン分泌能がない、といった病態なので、いくらインクレチンを増やしたところで意味がないのです。

また、腎機能障害、肝機能障害では、投与の注意・禁忌があります。特に、DPP-4阻害薬とSU薬を併用した場合には重篤な低血糖を起こして意識障害などを引き起こす可能性もあるため、高齢の方や腎機能・肝機能が低下している場合には注意が必要です。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみに薬剤師の資格を持っていますがペーパーです 笑