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【薬の知識】糖尿病に関わる薬 Vol.6- グリニド系

【薬の知識】糖尿病に関わる薬 Vol.6- グリニド系

糖尿病の薬シリーズ、だいぶ間が空いてしまいました。
今回は第6弾、前回のSU薬と機序的には似た薬で、インスリン分泌を促す薬剤であるグリニド系薬剤をご紹介します。

グリニド系薬剤とは?

前回ご紹介したSU薬の作用機序は、本来血中のブドウ糖濃度が高まると閉じるチャネル(Kチャネル)を人為的に閉じてやることで、強制的にインスリンの分泌を促すものでした。

しかし、SU薬は長時間に渡って持続的にこの効果が持続します。
確かにそのおかげで長期間血糖値を下げてやることが出来るのですが、その分インスリンを分泌する器官である膵臓が疲弊してしまう、というデメリットがありました。また、空腹時も作用してしまうため、食後以外では低血糖のリスクも高い、という特徴があります。

そもそも、なぜ糖尿病では血糖値を下げる必要があるか覚えていますか?
血糖値が高いと、腎臓などが疲弊するほか、毛細血管が詰まってしまったりといったことが起きてしまう(糖毒性)ため、血糖値を自身のインスリンでコントロールできない場合には、あらゆる方法で血糖値を下げてこうした毒性を回避する必要があるのです。

糖毒性は、血糖値が高ければ高いほど高まります。では一番血糖値が高くなるのはいつでしょうか?
答えは簡単、食後です。食後には、食べた炭水化物などが吸収され、血液中に糖として放出されていきます。なので、食後だけピンポイントでインスリン濃度を高めるようにすれば、膵臓が疲弊することなく糖毒性を減らすことが出来、低血糖の心配もないはず、というのが、このグリニド系薬剤の発想です。

また、日本人は元々欧米人に比べるとインスリンの分泌能が低く、特に血糖上昇に対するインスリン分泌の反応が遅い、という特徴があります。
グリニド系薬剤は食後の血糖上昇時に素早く効いてくれるため、そうした日本人の特性にも見事に合っていると言えます。

グリニド系薬剤の特徴と代表的な薬剤

グリニド系薬剤の作用機序は主にSU薬と一緒です。
違いは、早く効果が現れ、体内から素早く消失する(半減期が短い)というところです。

初めて日本に登場したのは1999年のこと、味の素などが共同開発したナテグリニドという成分の薬剤になります。ファステックとして味の素が製造したものを第一三共が販売している他、スターシスとしてアステラス製薬が販売しています。(海外ではStarlixとしてノバルティスが販売)。

ちなみに、同じ薬剤を別名で複数の会社が売る、というケースは度々みられます。有名なケースだと、抗鬱薬のルボックスとデプロメールや、抗アレルギー剤のシングレアとキプレスなどがありますね。

その後、2004年にはミチグリニドという成分のグルファスト、という薬剤がキッセイ薬品から発売されました。こちらは、ファステック/スターシスよりも効果が強いという触れ込みでしたが、食後低血糖を起こすこともないため、単純にファステック/スターシスの上位互換として投与される薬剤です。

その後、2011年にはレパグリニド、製品名シュアポスト、が大日本住友製薬から発売されました。ファステック/スターシスよりももう少し長時間効く、バランスの良い薬剤とのことです。

また、同じく2011年に、糖の吸収を抑えるαグルコシダーゼ阻害薬であるボグリボースとグルファストが合わさった合剤、グルベス、という薬も発売されています。狙いとしては、まず食事による糖の吸収速度を抑えた上で、食後にはグリニド系薬剤でインスリンをガツンと効かせて血糖値の立ち上がりを抑える、というダブルの効果を狙っったものです。

グリニド系薬剤の注意点

まず、グリニド系薬剤は、作用機序が基本的にSU薬と一緒であるため、併用することはできません。
また、飲むタイミングが実はかなり重要な薬剤です。

というのも、SU薬に比べて素早くインスリンの分泌を促すため、食事をする直前に飲む必要があるのです。食事の30分前などに飲んでしまうと、食事で血糖値が上がる前にインスリンが分泌されてしまい、低血糖を起こしてしまいます。

また、逆に食後では効果が減弱することも報告されており空腹時に服用しないといけないため、食直前、という他の薬とはちょっと違った、特徴的な服用タイミングとなっています。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみに薬剤師の資格を持っていますがペーパーです 笑