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【薬の知識】認知症に関わる薬 Vol.4 – 中核症状に使われるお薬④ メマリー

【薬の知識】認知症に関わる薬 Vol.4 – 中核症状に使われるお薬④ メマリー

これまで、毎週認知症に関わるお薬シリーズを続けてきましたが、ついに中核症状に使われるお薬はこれで最後!

①アリセプト(一般名; ドネペジル)

②レミニール(一般名; ガランタミン)

③イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ(一般名; リバスチグミン)

④メマリー(一般名; メマンチン)

このうち、最も新しく、他の3剤とは全く異なる作用機序を持つ、メマリーについてご紹介したいと思います。

概要

メマリーはメマンチンという成分の薬剤で、元々ドイツのMerz Pharmaceuticals GmbHで開発された製剤です。
2002年に欧州、2003年には米国で承認されていますので、この薬剤もドラッグラグの大きい薬剤と言えます。

日本では、第一三共の子会社であるアスビオファーマが臨床開発を行い、2011年から販売開始となりました。

ちなみに、臨床開発自体は既に1997年にメルツ社から導入し開発に当たっていたようなので、苦節14年、念願の国内承認となったわけです。

 

アルツハイマー病というのは今でも原因がわかっておらず研究が続いている疾患ではありますが、いくつかの原因はわかってきています。そのうちの一つの説が「コリン仮説」と言われる、アセチルコリンの濃度が下がることによって疾患が進行する、というものです。

①~③の薬剤は共にアセチルコリンエステラーゼ阻害作用が主な作用で、このアセチルコリンの分解を抑えることでアセチルコリンの濃度を高め、神経伝達を助けるという仕組みで疾患の進行を抑えます。

しかし、メマリーだけは、全く違った作用機序に基づく薬剤となっています。

もう一つのアルツハイマー病の原因仮説が、「グルタミン酸仮説」というもの。

グルタミン酸は、いわゆる「味の素」の主成分でもあり一般的には旨味成分として知られていますが、脳内においては記憶や学習に関わる神経伝達物質としても働くことがわかっています。(ちなみに余談ですが、このせいで一時期、味の素を食べると頭が良くなる、という都市伝説が生まれたこともあります 笑 グルタミン酸は飲んでも血液脳関門を通過できないため、脳には届きませんのでご注意を!)

通常時はグルタミン酸の濃度はほんのわずかですが、何かを学習したり、記憶したりするときには、シナプスから大量のグルタミン酸が放出されます。
シナプスの受け取り側には、「NMDA受容体」というものがあり、普段はMg2+(マグネシウムイオン)が蓋をしています。ここにグルタミン酸がくっつくと蓋が取れ、Mg2+と似た構造を持つCa2+(カルシウムイオン)が流れ込み、それによって記憶が形成される、という仕組みとなっています。

アルツハイマー病の患者では、このグルタミン酸の放出が常に活発になってしまっていることがわかっています。

すると、神経細胞内のCa2+濃度が異常に高まり、それにより神経細胞が死んでしまう、ということが起こります。
また濃度のメリハリもなくなってしまうため、どのタイミングで学習が行われているのかもわかりません。

これが「グルタミン酸仮説」というものです。

メマリーの作用機序は、Mg2+の代わりに、NMDA受容体の蓋の役割を果たすというものです。
しかしもちろん、一切Ca2+の流入がなくなってしまえば今度は学習ができません。
なんと都合の良いことに、メマリーはグルタミン酸の濃度がさらに高まった時には蓋から外れる仕組みになっているので、学習はちゃんと行うことができる、というわけです。

剤型と服用方法

剤型はフィルムコート錠(ツルツルの一般的な錠剤です)で、5mg, 10mg, 20mgの3種類が用意されています。

めまいの副作用などが報告されているため、転倒などに気をつけるとともに、容量も1日1回5mgからスタートし様子を見ながら1週間ごとに5mgずつ増量していく、という服用方法となります。

ちなみに、この薬剤は腎臓で代謝される薬剤となっているため、高度腎障害の場合には10mgで増量はストップする必要があります。

薬の効果

薬剤の効果としては、どちらかというと重度のアルツハイマーに特に効果を発揮し、怒りっぽい、興奮、攻撃的、徘徊といった周辺症状の軽減効果も(気休め程度ではありますが・・・)認められています。

ここまで4種類の薬剤を紹介してきましたが、先ほど説明した通り、メマリーだけは作用機序が違うため、残りの3剤と併用して使うことができます。
ただ、適用については、アリセプトは軽度・中度・重度すべてに使えるのに対し、レミニールとイクセロンパッチは軽度と中度のみ、そしてメマリーについては逆に中度と重度のみにしか使えないため、進行度合いによってそこで使える薬剤を組み合わせて使っていくことになるでしょう。

副作用については、便秘、めまい、頭痛、血圧上昇、傾眠の5つが主なものとして知られています。

CURATOR
ケアリッツマガジン運営者 Yuri
普段の業務に加えて、いろいろと記事を書いて情報発信しています。プライベートでは女子力高めなことが好きです。
ちなみに薬剤師の資格を持っていますがペーパーです。