【薬の知識】認知症に関わる薬 Vol.7- 周辺症状に使われるお薬③ コントミン
早いもので、もう認知症の薬について取り上げはじめて7回目になります。
今回も認知症の周辺症状に関わる薬物治療についてご紹介していきたいと思います!
いつもの通り復習から!
認知症は中核症状、周辺症状の二つに大きく症状が分けられ、一般的にイメージされる中核症状よりも実は介護側に負担となっているのは、鬱や統合失調様の症状を示す周辺症状、と言われています。
興奮・幻覚幻聴・妄想・せん妄といった陽性症状は、中脳辺縁系でドパミンが過剰に放出されていることが原因、ということで使われているドパミンD2受容体遮断薬、グラマチールを前々回ご紹介し、前回は少し変わった視点から漢方薬である抑肝散についてご紹介しました。
今回は、グラマチールとほぼ同様の作用機序を示すコントミン(ウインタミン)をご紹介します。この3剤が一般的に第一選択薬と言われているのでしたね。
コントミンの特徴
- 認知症に関わる薬 中核症状に使われるお薬
- 認知症に関わる薬 周辺症状に使われるお薬
- 認知症に関わる薬 Vol.5 – 周辺症状に使われるお薬① グラマリール
- 認知症に関わる薬 Vol.6 – 周辺症状に使われるお薬② 抑肝散
- 認知症に関わる薬 Vol.7 – 周辺症状に使われるお薬③ コントミン
コントミンの一般名は、クロルプロマジンと言い、なんと60年以上の歴史を誇る非常に古い薬です。クロルプロマジン製剤には、ウインタミンというものもありシェアを2分していましたが、2014年に製造中止となったため、今ではコントミンがクロルプロマジンとして使われています。
統合失調症薬には、第一世代と言われる定型抗精神病薬と、第二世代と言われる非定型精神病薬があるのですが、当然こちらは第一世代に分類されます。
定型抗精神病薬の特徴としては、非常に強力なD2受容体遮断作用がある反面、脳内の部位を問わず機能することで副作用も強く出る、という特徴があります。
ですので、特に一般的な統合失調症などに対しては非定型の方が主に使われるようになり、だいぶ出番は減ってきているのが現状です。
コントミンの副作用
大きく分けると、2つの副作用が有名です。
- 錐体外路症状
- 高プロラクチン血症
錐体外路症状とは、ドーパミンが少なくなりすぎてしまうことによって、ふるえやしびれ、手足が勝手に動いてしまうといった、パーキンソン病に似た症状が出てしまうことです。
ちなみにパーキンソン病の治療には、逆にドーパミンを増やすような薬剤を投与します。
また、高プロラクチン血症は、乳汁を出すホルモンであるプロラクチンが増えてしまい、胸の張りや、骨粗しょう症、乳がんなどのリスクを高めるといった作用を引き起こします。
それに加え、命に係わる重篤な副作用も報告されています。
- 悪性症候群(高熱、筋破壊で死に至ることもある副作用)
- 心室細動・心室頻拍(重篤な不整脈)
- 麻痺性イレウス(腸がまったく動かなくなってしまう)
他にも、アセチルコリン、ヒスタミン、アドレナリン、セロトニンといったあらゆる神経伝達物質も阻害させることから、口の渇きや便秘(アセチルコリンの阻害による作用)、血圧の低下やふらつき(アドレナリンの阻害による作用)、などが確認されています。
特に、大きく容量を変える際などは、副作用に敏感になり、少しでもおかしな様子が見られた場合にはすぐに医師への報告が必要です。
これだけ見ると、もっと安全な第2世代を使えばよいのに、と思ってしまいます。
ただ、かなり強力な鎮静作用があり、不眠にも効果を示すこと、何より長年使いなれている医師の先生方がいらっしゃるため、特に認知症においては根強く使われているのです。