【薬の知識】認知症に関わる薬 Vol.5- 周辺症状に使われるお薬① グラマリール

少々前回から時間が空いてしまいましたが、認知症のお薬についてまたご紹介していきたいと思います!
認知症の記事(こちら)にも書きましたが、認知症には、記憶障害や見当識障害、失語・失認や判断力の障害など、一般的に思われるような症状に加えて、鬱状態のような陰性の症状だったり、暴力・徘徊、妄想、過眠といった統合失調症のような陽性の症状、簡単に言ってしまうと一般的には精神疾患と近い症状を示すことがあります。
この後者の精神症状のことを、周辺症状、と言います。
周辺症状は、周りの人間が介護をする上で感じる大変さの大きな原因にもなっているため、中核症状だけでなく周辺症状についてもしっかりと治療を行っていく必要があります。
治療には当然いろいろなアプローチが存在しており、特に周辺症状については周りの介護者などの対応など、薬物治療以外のアプローチも重要ではありますが、今回はあくまでも薬物治療、という観点からまとめてみました。
- 認知症に関わる薬 中核症状に使われるお薬
- 認知症に関わる薬 周辺症状に使われるお薬
- 認知症に関わる薬 Vol.5 – 周辺症状に使われるお薬① グラマリール
- 認知症に関わる薬 Vol.6 – 周辺症状に使われるお薬② 抑肝散
- 認知症に関わる薬 Vol.7 – 周辺症状に使われるお薬③ コントミン
認知症の薬物治療
中核症状で使われるのはこれまでご紹介した、アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ、メマリーの4つですが、これらはいずれも神経伝達物質の効率を上げたり量を増やしたり、といった効果を示すため、無気力・うつ、といった陰性症状については良い効果を示すことがありますが、徘徊・暴力・妄想・介護抵抗などの陽性症状と言われる症状についてはむしろ悪影響を示すことがあります。
こうした周辺症状の特に陽性症状はアルツハイマー病の中期ごろに特に強く出ますので、その際には抑制系の薬を同時に服用することで抑えていくことが基本的な方針となります。
第一選択薬としては、グラマリール、ウインタミンや、漢方の抑肝散が挙げられます。
グラマリールの特徴
グラマリール(塩酸チアプリド)は80年代に登場した古い薬剤で、ドパミンD2受容体遮断薬というジャンルに分類される薬剤です。
ドパミンD2受容体遮断薬とはその名の通り、神経伝達物質であるドパミンの作用を抑える薬剤で、主に抗精神病薬と呼ばれる統合失調症の治療に多く使われています。
統合失調症は様々な症状を示すのですが、その中で興奮・幻覚幻聴・妄想・せん妄といった陽性症状は中脳辺縁系でドパミンが過剰に放出されていることが原因とされているため、こうした薬剤が有効と考えられているのです。
ちなみに、グラマリール自体は今では抗精神病薬として使われることは稀のようです。
比較的めまいや眠気が起きにくい反面、鎮静効果もそこまで高くはなく、半減期(効き目の切れる時間、と思えばよいです)も短いので、使いやすい薬と言われています。
副作用としては、抗精神病薬に共通して現れる「悪性症候群(NMS)」というものに注意が必要です。
発現率は非常に低いものの、急に薬の量を変化させたときに高齢者などに起きやすいともいわれており、注意が必要です。
- 高熱(38度以上)
- 意識障害(意識がボーッとしたり、無くなったりすること)
- 錐体外路症状(筋肉のこわばり、四肢の震えや痙攣、よだれが出たり話しずらくなる)
- 自律神経症状(血圧が上がったり、呼吸が荒くなったり、脈が速くなったりする)
- 横紋筋融解(筋肉が破壊されることによる筋肉痛・腎障害)
このあたりが代表的な症状で、命にかかわります。高熱や錐体外路症状に目を配り、確認されたらすぐに医師に連絡が必要です。